研究課題/領域番号 |
22J15058
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
岩場 雅司 横浜国立大学, 大学院理工学府, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
|
キーワード | スピン波 / マグノニクス / マグノン |
研究実績の概要 |
磁気の歳差運動を波として伝えるスピン波を用いたマグノニクス分野は、ジュール熱の発生しない超低消費電力の情報伝達システムとして利用が期待されている。本研究では、スピン波の集積回路に向けた増幅機構の確立のため、マイクロメートルスケールでのスピン波帰還構造の開発を行っている。 試料作製においては、レーザリソグラフィー装置と超高真空スパッタ装置を活用して、最小線幅2 μmを有する全長50 μmの微細化スピン波帰還構造を作製した。帰還構造は、リング型ループ回路を直線上の導波路に接続した構造である。スピン波帰還構造としてスピン波励起アンテナ、増幅アンテナ、リング共振部を含む導波路を設計した。スピン波帰還構造のリングループ導波路におけるスピン波周回伝搬を調べるため、空間分解能250 nmの精度を有するブリルアン散乱分光法を用いてスピン波の空間分布を測定した。 励起アンテナ部から生成されたスピン波は帰還構造のリング型ループ回路に分岐伝搬した。リング型ループ回路でのスピン波強度はループ回路全体で観測され、リング部でのモード変換が生じて伝搬していることが確認された。一方、増幅アンテナを使用してスピン波帰還構造から出力されるスピン波振幅の計測を行った結果、ループ構造を有していない直線導波路に比べて大きくなることが確認できた。増幅アンテナの入力電力位相を制御することで最大3倍の増幅効果を得ることに成功した。帰還構造の増幅器としての有用性を示すことができ、スピン波素子の集積化へ向けた利用が期待できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当研究では、マイクロナノメートルスケールの微細加工を駆使し、スピン波導波路の帰還構造と金アンテナの製作を確立した。レーザリソグラフィー装置と超高真空スパッタ装置を活用して、スピン波導波路は線幅2 μmに厚さ50 nm, 金アンテナは線幅3 μmの厚さ80 nmで作製を行った。また、金アンテナは、リーク電流を防ぐために絶縁膜であるSiO2をスパッタし、埋め戻し法により導波路に横切る部分で段差が無いようにした。 作製したスピン波帰還構造では、空間分解能250 nmの精度を有するブリルアン散乱分光法を用いて、スピン波の空間分布を測定した。リング型ループ回路でのスピン波強度はループ回路全体で観測され、リング部でのモード変換が生じて伝搬していることが確認された。また、増幅アンテナを使用してスピン波帰還構造から出力されるスピン波振幅の計測を行い、ループ構造を有していない直線導波路に比べて大きくなることが確認された。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、リング部でのスピン波の伝搬において、増幅アンテナの2箇所と分岐点の2箇所の干渉点が存在するため、スピン波の流れが複雑化している可能性がある。そのため、リング型ループ回路における波数の方向を考慮して評価する必要がある。 今後は、ブリルアン散乱分光法による波数分解測定により、スピン波の伝搬方向についての解析を行う予定である。また、電磁界シミュレーションであるMumax3を用いて、リング部でのスピン波伝搬について検討を行っている。
|