ウェアラブルデバイスやソフトロボットなどの伸縮性デバイスへの電気配線を実現するため,液体金属を用いた伸縮性電気配線の微細パターニング技術に関する研究を行った.一年という短期間の間に成果を挙げ,研究成果はQ1国際誌ACS Applied Materials & Interfaces に投稿済みであり現在revision中であるほか,今年度に行われる国際学会APCOT 2024 in Singaporeにも投稿しオーラル採択されている. 電子デバイスへの電気配線には大別して三つの要件が求められる.ひとつは電子素子を搭載することができるよう配線の上面がオープンであること.次に,配線のパターン形状に制約が少ないこと.そして不随意の短絡を防ぐために,基板上面に導通物質が残らずクリーンであること,である.しかしこれまで,これらの要素をすべて満たす液体金属のパターニング方法は提案されていない.硬質材料上に金属を配線する技法としてこれを満たし広く用いられている手法が真空蒸着法(PVD)であるが,液体金属は高い表面張力と酸化被膜により,直接PVDを行っても粒子化し導電性が保たれない.これまでの研究では導電性を確保するために物理的な粒子破壊活性化プロセスを経ていたが,この方法では基板の損傷や不本意な導通といった課題があった. そこで本研究では基板表面を塩化銅により改質し,濡れ性を大幅に改善することで,基板への液体金属の直接蒸着を可能にした.塩化銅表面では液体金属表面の酸化被膜が破壊される.これによりナノパーティクルが濡れ広がり互いに電気的に接続することで,伸長下でも導電性を維持することが可能となる.このように作製された伸縮配線は微細な薄膜であり,また基板表面と強固に結合していることから,フォトリソグラフィを含む数多くの加工方法と組み合わせることで様々な形状のパターニングが可能となった.
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