研究実績の概要 |
当該年度においてはいくつかの研究成果が挙げられた。特に動植物のDNAだけでなく、遺跡の土壌中に含まれる細菌叢の解析も行い、いくつかの興味深い知見が得られた。 ・チェコの岩陰遺跡であるVelky Mamutak遺跡において、中石器から鉄器時代までの各堆積層から土壌を採取し、DNA配列を決定した。その結果、ヤギ・ブタ・ヒツジ・ウシなど、様々な家畜のDNAが新石器時代初期から青銅器時代にかけて得られ、それによく対応する家畜動物の糞の細菌叢も検出された。このことから、この遺跡では家畜が当時存在していただけでなく、そこで飼育していた可能性が高いことが示された。この成果は既に論文として投稿しており(Zampirolo, Holman, Sawafuji et al. bioRxiv)、申請者は家畜動物の糞の細菌叢の全ての解析を担当した。 ・ウズベキスタンDalverzin遺跡のSector2,Sector9を含む10試料においてライブラリ作成に成功しショットガンシーケンスを完了した。得られたDNA配列データをバクテリア/古細菌/ウイルスと動植物(葉緑体・ミトコンドリア)の包括的なレファレンス配列にアライメントし、どのような分類群が含まれているか解析を行った。その結果、動植物では特にガマ・ヨシの古代DNAがSector2から顕著に検出され、Sector2は水路など水辺に近い環境であったことが推定された。またバクテリアに関しては、Sector9から好熱菌が多く検出され、古代DNA特有のダメージが見られた。このことから、この区画で何らかの人々の活動の影響により、恒常的に高温(50℃程度)が保たれているような状況だったと考えられる。
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