研究課題/領域番号 |
21J22938
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
小高 充弘 総合研究大学院大学, 複合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 方程式発見 / 因果ネットワーク / 深層学習 / データ・知識融合型アプローチ |
研究実績の概要 |
前年度までの流れを受け,観測データと背景知識からのネットワーク推定法の改良に比重を置きつつ,開発した手法の新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) への応用も進めた.状態変数に関する多変量時系列データと背景知識を組み合わせて使う「データ・知識融合型アプローチ」を提案し,COVID-19 の遺伝子発現量データと生物学的な背景知識に応用することにより,細胞接着に関わる3種類の分子(遺伝子名:ICAM1, ACTB, C15orf48)の新規パスウェイ構築とネットワークダイナミクス分析に貢献した.同アプローチに立脚しながら,多変量時系列データから深層学習した因果ネットワークを微分方程式系の同定における仮説探索空間の制約として利用する手法を検討した.予備実験として支配方程式既知の決定論的力学系から人工生成した時系列から敵対的生成ネットワークにより構造因果モデルを学習し,元の方程式表現と力学系のダイナミクスを再現できるか評価した.既存の方程式発見手法よりも提案手法の方が数式の再現度が高く,再現できない場合もモデルを必要最低限の変数で倹約的に表現する傾向が見られた.今後は因果性を扱う場合の数学的な前提条件や力学系に取り入れる高次非線形関数の許容範囲を変えつつ,ハイパーパラメータの感度分析とスケーラビリティの評価実験,既存の構造方程式モデリング手法や時系列因果推論手法との比較を行い,新規手法として完成に近づける.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開発中の技術はデータ・知識から因果ネットワークと微分方程式系の学習・推論を行うものであり,従来手法のようにデータの離散化を経て推論を適用するのではなく連続代数空間のまま因果推論を行うことで敵対的ノイズにロバストかつ解釈性も高いモデルを発見しようとする点において,新規性・独自性があると期待される.こうした技術開発を通じ,スケーラブルなネットワーク学習・推論,遺伝子制御ネットワークや化学反応ネットワークのような多自由度系への応用,感染システムダイナミクスの理解・制御,といった発展に向けた準備ができたと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
本年度成果を踏まえ,ダイナミクスを支配する因果ネットワーク及び微分方程式系の解釈可能な学習・推論フレームワークを開発する.記号推論(アブダクション)との接続による潜在的因果関係の発見やモデル検証,モデル修正・更新,ならびに非線形システムへの対応,ネットワーク頑健性評価といったタスクをこなしながら,提案手法を拡張・整備・展開する.開発する最新フレームワークを,マルチスケール性を持つウイルス感染系の遺伝子や代謝産物のオミクスデータに適用し,大規模なネットワークダイナミクスの原理理解や制御,知識発見といった課題に取り組む.最終的にはオープンサイエンスの促進としてツール化やプラットフォーム開設も予定している.
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