本研究目的は、近年注目されつつあるフィラメント状分子雲同士の衝突による誘発的星形成過程を数値実験により理論的に理解することであった。最終年度に相当する今年度は、フィラメント長軸同士が直交する衝突を再現した三次元理想磁気流体計算を行い、進化の様子と衝突箇所が不安定となる条件を明らかにした。まず、衝突の結果得られた進化モードとしては、衝突箇所が暴走的収縮を示す崩壊モード、振動安定状態を示す安定モード、衝突方向に拡がってゆく膨張モードの三つが得られた。各モードの発現条件は衝突速度に依存しており、音速程度の衝突の場合、フィラメントの交差部に含まれる質量が、磁場に貫かれた球の支えることのできる最大の値である磁気臨界質量を上回っている場合には崩壊モード、そうでない場合には安定モードとなることを明らかにした。超音速の衝突の場合、進化モードは衝突直後の圧縮箇所のエネルギーバランスで説明可能であることを示した。つまり、圧縮箇所の持つ重力エネルギーよりも、運動エネルギー、熱エネルギー、磁気エネルギーの合計が優勢の場合、音速程度では崩壊モードや安定モードを示していたモデルであっても膨張モードに転じることを明らかにした。 以上のことから、前年度調査していたフィラメント長軸同士が平行な正面衝突の研究結果と合わせて、当初の研究実施計画で予定していたフィラメント衝突現象における衝突箇所が不安定となる条件を導くことができた。
|