本研究課題では、分子雲コアへの質量降着を考慮した、現在の標準シナリオよりも現実的な星形成モデルの構築に向けた研究を行なった。DC2採用期間の2年間において4つの研究計画を提案し、1年間研究を行なった結果を以下に報告する。 【各研究計画の実施状況】 <研究計画A>分子雲の階層構造を用いた分子雲コアの質量の計算手法:分子雲の観測手法にはダスト連続波と分子輝線の2種類がある。研究計画立案時は前者の場合のみを検討する予定だったが、両方の観測データから分子雲コアやその質量関数を導出する手法を構築する手法を構築するように方針を変更した。その結果、それぞれの観測手法が分子雲コアの質量関数に与える影響やその補正手法を網羅的に明らかにした。<研究計画B>CASAシミュレーターを用いたmissing fluxの評価:シミュレーターを用いた研究の代わりに、<研究計画A>の結果を踏まえ、干渉計の観測データで分子雲コアの質量関数を導出した際に想定される影響を検討した。なお、その結果は、本研究計画で実施を想定していた模擬観測を実施した最近の結果と整合的であった。<研究計画C>赤外線暗黒星雲観測データへの適用:よく性質が知られた分子雲において、将来の観測の際に基準となる分子雲コアのカタログと分子雲コアの質量関数を導出するに方針を変更し、<研究計画A>の内容を踏まえてオリオンA分子雲の観測データの解析を行なった。この結果はすでに学術誌で発表済みである。<研究計画D>星形成の初期条件および質量降着に伴う進化の検討:質量降着率やその過程について検討を行い、[研究計画C]と併せて発表済みである。 【本研究課題全体の実施状況】 本研究課題の目的に向けて、①分子雲コアの質量を観測から導出する手法、②さまざな領域の分子雲コアの質量関数を比較する際に基準となる分子雲コアカタログの作成という、2点について大きな成果があった。
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