研究課題/領域番号 |
22J20739
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
土井 聖明 総合研究大学院大学, 物理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | 惑星形成 / 原始惑星系円盤 / ダスト / 電波観測 / ALMA |
研究実績の概要 |
惑星形成は、原始惑星系円盤と呼ばれる周星円盤の中で、固体微粒子であるダストが合体成長をすることから始まると考えられている。しかし、このダスト成長過程には多くの困難が指摘されており、未解明である。そこで、本研究では原始惑星系円盤内のダストサイズをALMAを用いた電波観測から明らかにすることで、惑星形成過程の解明に取り組む。本年度は(1)高解像度多波長観測(2)偏光観測の2つの手法からダストサイズの制約に取り組んだ。 (1)について、リング構造を持つ天体に対して、複数波長で観測した際の見かけのリング幅の観測波長依存性からダストサイズを制限する新しい手法を提案した。そして、実際にリング構造を持つHD 163296周りの原始惑星系円盤中のダストサイズを、2つの波長(1.25 mm、2.14 mm)の高解像度観測画像(<0.05秒角)から制限した。結果、円盤中の最大ダストサイズだけでなく、サイズ分布の冪指数にも強い制限を付けることに成功した。また、この手法を他の天体にも適用するためALMAを用いたPDS 70の高解像度多波長観測の観測提案を行い、採択された。この観測は2023年度中に実行される予定である。 (2)については、2021年度にDM Tau周りの円盤の偏光観測提案を実施済みである。この観測は2022年度に実行され、年度末にデータが届いた。このデータの解析は来年度、行う予定である。また、ALMAを用いたPDS 70周りの円盤の多波長偏光観測の観測提案を行い、採択された。この観測も2023年度中に実行される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
円盤ダストリングの見かけのダスト空間分布の波長依存性から、ダストサイズ分布を制限する、新たな手法の提案を行うことができた。また、その手法を観測データに適用することで、ダストサイズ分布の、特に冪指数に、これまでにない強い制限を付けることに成功した。本研究で求めた冪指数から、ダストの質量は大きいダストが担っているが、表面積は小さいダストが担っていることが明らかとなった。この結果はダストの表面積が影響する、円盤冷却タイムスケールや電離度、乱流状態、ダスト表面での化学反応等の議論に波及効果がある。これらの内容をまとめ、論文を投稿することができた。 また、昨年度は複数のALMA望遠鏡の観測提案を行い、うち2本の新規観測提案が採択された。これらのデータをもとに、円盤ダストサイズの推定をさらに進めることができると期待される。 これらの状況を踏まえ、本研究課題「ALMA観測に基づく原始惑星系円盤のダスト成長過程の解明」としては、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
円盤中のダストサイズ分布の制限を複数の手法から行うことで、円盤中のダストサイズ分布の描像をより確実にしていく予定である。まずは、年度末にデータが届いたDM Tauの観測データを用い、偏光観測に基づくダストサイズの推定を行う予定である。 また、今年度の研究で明らかとなった、見かけのダスト空間分布の波長依存性からのダストサイズの推定を、他天体にも適用することで、ダストサイズ分布の制限をより一般的なものにしていく。来年度、観測が実行予定であるPDS 70のデータ解析を、データが届き次第行う。また、国際研究会に出席し、このダストサイズの制限手法を宣伝し、広めていく予定である。
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