研究課題/領域番号 |
22KJ1435
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
土井 聖明 総合研究大学院大学, 物理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | 惑星形成 / 原始惑星系円盤 / ダスト / 電波観測 / ALMA |
研究実績の概要 |
惑星の形成は、原始惑星系円盤と呼ばれる星周円盤の中で、固体微粒子であるダストが合体成長を繰り返し成長することから始まると考えられている。しかし、このダストの成長過程には未解明な点が残されている。 本研究では、Atacama Large Millimeter/submillimeter Array (ALMA) を用いた原始惑星系円盤の高解像度の電波観測画像から、ダストの成長がどのような環境で、どの程度進行しているのかの解明に取り組む。特に、円盤ダストの力学特性・光学特性に注目することで、観測量である円盤の放射の空間分布から、円盤物理量である円盤ダストの空間・サイズ分布を制限した。さらに、これらのダストの特徴量に基づいて、ガス乱流強度を含む円盤物理状態の推定を行った。 昨年度は、円盤ダストサイズ分布を推定する新手法とその適用に関する論文を一本発表した。この論文内では、対象円盤である HD 163296 のダストのサイズ分布のうち、最大サイズだけではなくサイズ分布の冪指数についても強い制限を与えた。ここで制限されたダストサイズ分布の冪指数は、ダストが成長と破壊の平衡に達している場合の理論予想と整合的なものであり、対象として円盤ではダストが数ミリまで成長した段階で、成長と破壊の平衡に達していることを示した。 このように、本研究は、惑星の形成現場である原始惑星系円盤のダストを観測的に特徴づけることで、未解明であるダストの成長過程を制約し、惑星形成シナリオを解き明かす鍵となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は、以下の学術論文を出版した。 "Constraints on the Dust Size Distributions in the HD 163296 Disk from the Difference of the Apparent Dust Ring Widths between Two ALMA Bands" この論文の中では、我々は多波長の高解像度観測を用いることで、放射の空間分布の波長依存性からダストのサイズ分布を制限する、新しい手法を提案した。また、その手法を非常に明るく多波長での高解像度観測が存在する、HD 163296 に適用することで、この天体のダストサイズ分布の制限に成功した。制限したダストのサイズ分布は、どのような環境下で、どの程度ダスト成長が進んでいるのかを明らかにするものであり、当初の研究目標を着実に達成するものである。したがって、現在の進捗状況としては順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、多波長の高解像度観測の解析を通して、より正確な円盤環境の制約に取り組む予定である。昨年度は、これまでも取り組んできた、HD 163296 円盤に対する、これまでよりも短波長の ALMA 観測が新たに採択された。これまでのデータと合わせることで、非常に広い波長レンジの高解像度データが揃う予定である。これらのデータの解析と、その解釈を通して、ダストの成長環境をより詳細に明らかにし、惑星の形成過程をより強く観測的に制限していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は年度末の出張のため、科研費の前倒し請求を行った。結果的にその出張に対しては所属機関からの旅費補助を受けることができたため、約4万円の未使用額が生じた。この費用は、今年度の旅費として使用予定である。
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