研究課題/領域番号 |
21J23595
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
杉山 博崇 新潟大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 落石 / 岩盤崩落 / SfM-MVS / 凍結融解作用 / 白馬大雪渓 |
研究実績の概要 |
多雪地域の高山帯の岩盤崩落メカニズムを解明するため,飛彈山脈北部,白馬大雪渓周辺において野外実験と空撮技術による岩盤斜面のモニタリングを開始した.野外実験として,地温計を斜面方位や積雪期間,亀裂の有無などの条件が異なる場所に設置するとともに,タイムラプスカメラで地温計周辺の気象状況を把握できるようにした.そのほかにも,日射計や気温計,湿度計などを設置し,観測体制を整えた.空撮による観測手法として,6月~11月に3週間に1回のペースで現地調査(UAV空撮)をおこなった.セスナ空撮は4月と10月におこなわれた.7月からは白馬村営頂上宿舎に2か月ほど滞在し,UAVを用いた岩盤斜面の空撮や野外実験用の器材の設置及びメンテナンスをおこなった.2次元の画像データから3次元形状を特定する手法であるSfM技術を用いて,現地で取得した空撮画像から点群の3D地形モデルを作成した.点群解析ソフトやGISソフトなどの解析ツールを使用して,これまでに作成した点群データとの比較をおこなった.その結果,白馬岳,杓子岳の頂上の稜線付近では,近年活発な岩壁の後退が生じていたことが明らかになった.また,杓子岳では,岩盤に発達する節理の走向・傾斜と後退率には関係がみられた.本研究で得られた研究成果を国内の学会において発表した.また,現地調査中に大学の講義室と現地をZoomでつなぎ,学生向けにオンライン講義をおこなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
長野県北部,白馬大雪渓周辺において,当初の予定通り現地調査を実施することができた.野外実験については,斜面の安定性に大きく関わる温度変動を捉えるための観測体制を整えることができた.入山ができなくなる冬の直前に実施した最後の現地調査では,無事にデータが蓄積されていることを確認した.亀裂変位計の設置はできなかったが,当初の予定には無かった日射計や湿度計の設置をおこなうことができた.また,白馬村営頂上宿舎に2か月ほど滞在したことで,杓子岳~白馬岳の岩盤斜面において,広範囲のドローン空撮を複数回おこなうことができた.来年度,同じ場所で空撮をおこなえば,岩壁が後退した場合はその規模を定量的に明らかにすることができる.
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今後の研究の推進方策 |
野外実験による岩盤破砕メカニズムの観測やUAVによる岩壁後退過程の観測などの多面的アプローチで岩盤崩落メカニズムを明らかにするためのデータを蓄積していく.2022年度からは,昨年度に設置した気象測器のデータを回収し,記録された値の変動要因や落石の発生時期について検討をおこなう.現地に設置されたタイムラプスカメラの画像や衛星画像から気象状況を確認し,温度データや季節ごとの岩壁の後退量と比較しながら解析をおこなう.また,新たに亀裂変位計を岩盤に設置し,亀裂開閉のタイミングと温度変動の関係についても検討していく.空撮による現地画像の取得を継続的におこない,岩盤斜面の点群データの蓄積を図る.
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