研究課題/領域番号 |
21J23595
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
杉山 博崇 新潟大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 落石 / 岩盤崩落 / SfM-MVS / 凍結融解作用 / 白馬大雪渓 / 積雪寒冷地 |
研究実績の概要 |
本研究では,多雪地域の高山帯の岩盤崩落メカニズムを解明するため,飛騨山脈北部,白馬大雪渓周辺において野外実験と空撮技術による岩盤斜面のモニタリングをおこなっている.昨年度,野外実験として,地温計を斜面方位や積雪期間,亀裂の有無などの条件が異なる場所に設置するとともに,タイムラプスカメラや気温計で地温計周辺の気象状況を把握できるようにした. 本年度は,9月から10月にかけて調査地近くの山小屋に滞在し,昨年度に設置した観測機器のデータを回収した.また,新たに亀裂変位計を岩盤に設置し,岩盤の破壊に重要な亀裂開閉のタイミングと温度変動の関係についても検討が可能になった.空撮による観測手法として,昨年度に撮影した場所と同じ岩壁をUAVで撮影した.セスナ空撮が2022年4月と2022年10月に実施され,UAVでは撮影が困難な広域の画像を取得した.2次元の画像データから3次元形状を特定する手法であるSfM-MVS技術を用いて,現地で取得した空撮画像から点群の3D地形モデルを作成した. 2021年秋(融雪末期)と2022年春(積雪最大期)の地形モデルの差分から,地温計を設置した場所の積雪深を求めることができた.地温データと比較した結果,冬期の寒気が遮断されるほど厚い積雪のある場所では,全地点で最も高い年平均地表面温度を記録し,積算寒度は極端に小さく,深度による差もほとんどみられなかった.積算寒度は年平均地表面温度が低い場所ほど大きくなる傾向にあったが,積算寒度の増加のタイミングや最高・最低地温は日射条件や積雪の付き方により異なっていた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
野外実験および空撮によるデータの蓄積は進んだが,悪天候や感染症の影響で8月上旬まで現地調査を十分に実施できなかった.そのかわりに解析ソフトを購入し,地温の観測結果や3D地形モデルの統計解析をおこなった.また,地温計設置地点の温度データを周囲の岩盤斜面全体に適応させるため,熱赤外カメラを購入した.地温の観測箇所が映るように岩盤斜面を撮影することで,画像内の広範囲の岩盤温度データを校正できる.撮影テストを本年度に実施済みであり,来年度の現地調査で使用する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
来年度に再び地温データを回収し,2年間の観測結果を得る予定である.モニタリング対象である大雪渓周辺の岩盤斜面全体の温度モデルを作成し,崩落の発生域データとの比較をおこなう.
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