研究課題/領域番号 |
21J23338
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
三輪 徹 長岡技術科学大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | MBR / 膜ファウリング / 後生動物 / バイオフィルム |
研究実績の概要 |
膜分離活性汚泥法(MBR)は高い排水処理性能を有しているが、膜上におけるバイオフィルム形成に伴う膜の目詰まり(膜ファウリング)が依然として主要な課題である。本研究はその課題に対し、バイオフィルム捕食能力を有する後生動物を活用した新規膜ファウリング制御技術を開発することを目的とする。本年度は、立体型メッシュ担体を無酸素/酸素MBRに導入し、膜ファウリング緩和に資する後生動物の集積培養系の確立を行った。コントロール系のMBRと比較して、立体型メッシュ担体を設置したリアクター内の活性汚泥は、Nematodes、Oligochaetes、Rotiferなどの後生動物数が優位に増加し、原位置における後生動物の集積培養に成功した。また、立体型メッシュ担体は高濃度の汚泥を保持し、上記後生動物の他、比較的大型のミミズやダニの生息も確認した。膜ファウリング誘発物質である活性汚泥上澄中の全有機物質(TOC)濃度及びタンパク質、全糖物質濃度を調査したところ、運転期間中でこれら物質は有意に減少した。さらに、活性汚泥の濾紙濾過性は約20%向上し、余剰汚泥量も大幅に削減されるなど、活性汚泥の性状は大きく改善された。したがって、立体型メッシュ担体をMBRに設置することで、活性汚泥は膜ファウリングが発生しにくい性状へと変化した。また、バイオフィルムを原位置から採取し、顕微鏡観察を行ったところバイオフィルム中には後生動物(特にNematodes)が存在し、後生動物はバイオフィルムを捕食し生存しているものと考えられた。しかし、膜ファウリングの発生頻度はコントロール系と同程度であり、膜ファウリング緩和にまで至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は後生動物の棲家となる立体型メッシュ担体をMBRに導入する手法について検討した。その結果、活性汚泥中の後生動物数が優位に増加するリアクター構成及び運転条件を確立し、さらにメッシュ担体中へのNematodes, Oligochaetes, Rotiferといった後生動物の原位置における集積培養に成功した。また、メッシュ担体を設置することで、膜ファウリング誘発物質(タンパク質、全糖物質)は減少した他、活性汚泥の濾紙濾過性の向上、余剰汚泥量の減容を確認し、膜ファウリング緩和に資する活性汚泥性状を実現した。以上のことから、後生動物をリアクターに適用するための素地を培うことができたため、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、16S rRNA及び18S rRNA遺伝子に基づく微生物群衆構造解析やバイオフィルムの詳細分析を通じて、後生動物のMBRにおける生理生態及び、バイオフィルム形成細菌への影響について評価する予定である。またバイオフィルムを真に形成する細菌の特定をすすめる。活性汚泥、バイオフィルムから生菌のみを検出する手法についても検討し、活性汚泥中やバイオフィルム中で"生きた”細菌についてのデータを集積し、後生動物がそれらを捕食する手法について検討する。現状の運転手法では膜ファウリング緩和に至っていないため、これら後生動物の生理生態についての知見を参考に、ファウリング緩和に資する運転手法や技術の開発を行う。
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