研究課題/領域番号 |
22J20726
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
小菅 周斗 富山大学, 医学薬学教育部, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | 金触媒 / ピリジン / アザエニンメタセシス / オートタンデム触媒反応 / アルカロイド |
研究実績の概要 |
多置換ピリジンは医薬品や天然物に広く見られる化合物群であり、その新規合成法の開発は重要な研究課題である。本研究課題では、カチオン性金錯体の連続反応による簡便で迅速な多置換ピリジン合成法の開発と、本法による抗がん活性アルカロイドStreptonigrinの不斉全合成の達成を目標としている。 本年度は、Streptonigrinの全合成において鍵となる、カチオン性金錯体によるイミン誘導体のC=N結合とアセチレンのC≡C結合組換え反応(アザエニンメタセシス)を基盤とした、独自のワンポット多置換ピリジン構築法の開発に取り組んだ。まず、反応基質であるイミン誘導体のN原子上の置換基を精査したところ、ヒドロキシ基やメトキシ基等を有したオキシム誘導体は反応性に乏しい一方で、ヒドラゾン誘導体は高い反応性を示し、検討の結果N,N-ジメトキシカルボニル基が最適であることを見出した。反応条件の最適化と基質一般性の検討の結果、23種のピリジン誘導体を最大収率79%で得た。また、研究を進めていく過程で、本ピリジン合成反応は、カチオン性金錯体がアザエニンメタセシスおよび付加・環化反応の両段階を触媒する「オートタンデム触媒反応」であることを見出した。続いて、Streptonigrinの全合成に必要な非対称ピリジン合成の検討をおこなった結果、アルキンの当量の制限および反応濃度の希釈により、異なる二種のアルキンを導入した非対称ピリジンを良好な収率(63%)で得ることに成功した。さらに、確立した本ピリジン合成反応を用いたStreptonigrinの全合成に向け、モデル実験としてキノリン核を有したアルキンとイミン誘導体を用いた本法の検討をおこなっている。しかし、キノリン核を有したアルキンが本反応条件には適さないことが判明し、現在さらなる条件検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通り、カチオン性金触媒によるアザエニンメタセシスを基盤とした多置換ピリジン合成法の開発をおこなった。まず、反応基質のイミン窒素上の置換基を精査した結果、N,N-ジメトキシカルボニル基を有したヒドラゾンが高い反応性を示すことを見出した。また、条件検討と基質一般性の検討により、入手容易なヒドラゾンとアルキンからワンポット反応で多置換ピリジンを最大79%で得ることに成功した。さらに、アルキンの当量の制限および反応溶媒の希釈により、異なる二種のアルキンを導入した非対称ピリジンのワンポット合成を達成することで、本法の有用性を示すことができ、論文投稿に漕ぎ着けることができた。現在、Streptonigrinの全合成に向けて、ピリジン核へのジメトキシフェノールユニットの導入の検討も開始し、適切な保護基についても重要な知見を得ることに成功した。したがって、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、Streptonigrinの全合成に向けたモデル実験として、キノリン核を有したアルキンとヒドラゾンを用いた本ピリジン合成反応の条件検討を行う。前年度の検討の結果、キノリン核を有したアルキンに対して本反応条件をそのまま適用すると、目的の反応が進行しないことが判明し、さらなる検討が必要であることが明らかとなった。反応が期待通りに進行しなかった原因として、キノリンN原子の求核性の高さが予想される。そこで、立体的および電子的観点から求核性を抑制したキノリン誘導体を用いた検討を進める。また、インドール核を有したアルキンを本ピリジン合成法に適用し、インドール核を導入したのちにCiamician-Dennstedt反応によって環拡大し、インドール核をキノリン核へ変換する検討や、ハロゲン化ピリジンを得たのちにクロスカップリング反応を用いてキノリン核を導入するなど間接的にキノリンユニットを構築する戦略も行う予定である。 キノリン核を有した多置換ピリジンの合成法を確立したのち、本基質を用いたStreptonigrinの全合成研究を進める予定である。
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