研究課題/領域番号 |
20J40160
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
岩崎 純衣 金沢大学, 人間社会研究域人間科学系, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | メタ認知 / 情報希求 / ラット / 比較認知 |
研究実績の概要 |
メタ認知とは、自身の認知状態をモニタリングしコントロールする高次の認知機能である。この認知能力はヒト特有のものと考えられてきたが、近年の研究により幅広い動物群に共有されていることが示唆されつつある。しかしこれまでの研究では「当該動物がメタ認知能力を有するか」に焦点が当てられ、ヒトとヒト以外の動物がもつメタ認知の質的相違点については検討されていない。そこで本研究はヒトとヒト以外の動物がもつメタ認知の質的差異を検討し、得られた知見からメタ認知の進化過程を考察することを目指す。 前年度は、ラットの事前に情報を収集する行動(予見的な情報希求行動)について検討した。課題解決のために情報希求が必要なエリアと必須ではないエリアを同時提示した場合、ラットは将来手がかりが除去されるエリアで長く探索行動を行うような予見的な情報希求行動は見せなかった。そこで令和3年度は、その課題を発展させ、先のエリア選択を繰り返し経験することで、予見的な情報希求行動が出現するかを検討した。するとラットは徐々に弁別課題エリアでも情報探索を行うことを学習できることが明らかとなった。同様の実験状況を用いたヒト幼児や一部鳥類における先行研究では、課題を繰り返し経験せずとも、課題の初期から適切な予見的な情報希求行動を示すことが報告されている。この差異は種差を示唆しているのかもしれない。さらに続く実験では“今利用できる情報の有無”によってラットの情報希求行動が変化するかを検討した。手がかり物体があるエリアとないエリアとでどちらに長く滞在するかを分析したところ、ラットはごく初期から情報のある(手がかりのある)エリアでの探索を長く行った。つまり、今回用いた実験状況において、ラットは現在利用できる情報に対しては適切な情報希求行動を示すが、将来に向けた予見的な情報希求行動は示さないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究により、課題解決のために情報希求が必要なエリアと必須ではないエリアを同時提示した場合、ラットは予見的メタ認知を示さないことが明らかとなった。一連の結果は、2件の国内外の学会において発表を行い、現在、国際学術雑誌へ投稿中である。当初計画していた発達研究は、昨年度に引き続きコロナウイルス感染拡大の影響を受けて学外から参加者を募って実験を行うことができなかった。一部計画通りに進まなかったが、本研究の支柱であるラットの行動実験においてまとまった成果が得られたことから、研究はおおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は産休育休のため研究を一時中断するが、それ以降は令和3年度に引き続きラットのメタ認知、情報希求行動に関する行動実験を進める。またコロナウイルス感染状況をみつつ実験協力者が安心して参加できる環境が整った場合、就学前児を対象にしたメタ認知実験を実施する。そして本研究によって得られた知見と先行研究の知見を踏まえ、メタ認知の一側面である情報希求行動におけるヒトとラットの類似点と相違点を考察する。
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