研究課題/領域番号 |
21J21107
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
西尾 郁也 金沢大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | カンラン岩 / 太古代 |
研究実績の概要 |
初期地球についての地質帯研究の多くはジルコンなどの副成分鉱物,同位体 組成などの局所・化学的指標に基づいている.これらの情報は地殻岩石形成時の情報を主に反映しており,熱や物質の供給源となる太古代マントルの情報が乏しいことが問題点である.本研究はグリーンランドに分布する 30 億年前に形成された地質帯中に産する最大規模のカンラン岩体に着目した.太古代地質帯は主に変成岩類であるが,カンラン岩体が変成岩中に小規模ながら普遍的に産出する.太古代カンラン岩の成因として、(i)マグマからの結晶集積カンラン岩と (ii)部分溶融後の残渣カンラン岩という対照的な形成モデルが提案されており,結論には至っていない.しかし、いずれの成因の場合でもカンラン岩の成因論から太古代の上部マントルの情報を得られる可能性が高い.そこで,太古代カンラン岩体を研究対象とし,その成因・形成後の履歴を明らかにすることを目標とし,周囲の変成岩類の履歴と共に初期地球の熱条件・テクトニクスについて総合的に検討を行った.本年度は太古代カンラン岩の岩石学的・化学的特徴を明らかにし、太古代上部マントルの組成,火成岩としての形成条件と形成後の温度圧力履歴の解明を目的として研究を行ってきた.その結果,研究対象としたカンラン岩体には周囲の変成岩・花崗岩に由来する流体流入に伴う交代作用、岩体内部にはさらに異なる交代作用の少なくとも2種類の改変作用を経験していることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
太古代カンラン岩に記録される交代作用の実態を明らかにしたこと(Nishio et al., 2022).と研究結果をもとに今年度の夏に野外調査を行う予定である.また,太古代カンラン岩との比較として行った深海性カンラン岩に対する組成データ解析手法を用いた論文が現在査読中である.
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今後の研究の推進方策 |
今後はグリーンランド太古代カンラン岩にともなうクロミタイトの成因とノーライトという岩石中のジルコンから変成作用の年代の制約とカンラン岩の交代作用をもたらした流体・メルトの組成の制約を目的として研究を進める.そのために今年度の夏に野外調査を行い詳細な地質図の作成と試料の採取を行う.
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