研究課題
本研究は、植物特化代謝へ進化する過程でつくりだした酵素複合体がダイナミックに動く姿と、分子レベルでの詳細な構造を捉え、高効率な生合成の謎を解明することを目的としている。本年度についても、昨年度と引き続き、植物特化代謝において高効率な生合成の鍵と考えられる代謝酵素複合体(メタボロン)について、その作用機序を明らかにするため、メタボロン構成因子の単体及び複合体の単離・精製・結晶化方法の検討を行った。カルコン合成酵素とメタボロン構成因子との複合体構造について、精製条件や結晶化条件の再検討を行ったところ、分解能が向上した良質なデータセットが得られ、分子置換法による位相決定に成功した。さらに、カルコン合成酵素と阻害物質との複合体構造も追加で決定し、複合体形成時のメタボロン構成因子Aとの相互作用界面を踏まえ、新規な酵素活性制御機構を議論した。また、当初の計画に基づき、高速バイオAFMによる動的構造解析についても条件検討を進めており、上記の二者複合体について、結合・乖離を繰り返している像の取得に成功し、両者が可逆的な相互作用を有することを明示した。現在、複合体のライフタイムを算出することを目的にデータ解析を進めている。本研究により得られた成果として、フラボノイド代謝の始点となるカルコン合成酵素について、メタボロンの一部を構成する制御タンパク質との複合体化により曖昧な酵素活性を矯正する分子機構について、単独及び制御タンパク質との複合体の構造決定や、高速バイオAFMによる動態観察を踏まえ、動的な構造変換を含む新規な分子機構を解明した。さらに、イソプレノイドについて、ネリル二リン酸合成酵素NDPS1のアポ体及び基質アナログ複合体の結晶構造解析に成功し、変異導入による酵素改変結果も踏まえ、縮合回数の制御機構や末端領域の役割についての分子メカニズムを解明した。
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ChemBioChem
巻: 25 ページ: e202300796
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The Journal of Biochemistry
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