高等哺乳動物の大脳には大脳皮質領域間をつなぐ多くの連合線維が存在する。その一つはU-fiberと呼ばれる大脳皮質直下に位置する短連合線維である。U-fiberは近隣の大脳皮質領域をつないでおり、脳の高次認知機能にとって重要であると考えられている。また、多発性硬化症、自閉スペクトラム症、統合失調症やアルツハイマー病などの様々な神経疾患や精神疾患に関与していることが報告されていることから、U-fiberの特徴を明らかにすることは、脳機能と疾患病態の理解に重要であり、脳神経医学の重要な課題の一つである。しかしU-fiberは研究に多く使われているマウスでは見つかっていないため、マウスでは解析が困難であることから研究が遅れていた。そこで本研究は、U-fiberを持つ哺乳動物のフェレットを用いて、その特性を解析した。フェレットの大脳サンプルを用いて解析した結果、髄鞘染色のシグナル強度がU-fiber領域内で不均一であることを見いだした。具体的には、大脳皮質直下には髄鞘染色で弱く染色される領域が存在することを見いだし、この領域をouter U-fiber領域、髄鞘染色で強く染まる領域をinner U-fiber領域と名付けた。さらに電子顕微鏡で解析した結果、outer U-fiber領域には薄い髄鞘をもつ細い軸索が多い一方、inner U-fiber領域では厚い髄鞘をもつ太い軸索が多く含まれていることを見い出した。さらにinner U-fiber領域は他の白質領域と比較して特に髄鞘が厚く直径が大きな軸索を含んでいることを示唆する結果を得た。これらの結果は大脳のU-fiber領域は従来想定されてきた以上に機能的に複雑であることを示唆している。
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