研究実績の概要 |
本年度は、申請者が最近開発したテレケリックポリ(フェニルアセチレン)(PPA)類の精密合成法を活用して、PPA類を基盤とする超分子材料の開発に取り組んだ。高分子の両末端にいくつかのホストおよびゲスト分子を導入したテレケリックPPAを合成し、その超分子化による物性の変化を試験した。しかし、そのキロプティカル特性は超分子化しない場合と比べてほとんど増大せず、期待した成果は得られなかった。 一方で、我々が独自に開発したロジウム触媒によるフェニルアセチレン類のリビング重合において、ジアゾ酢酸エステルを停止剤に用いる新たな終末端官能基化法を開発した。既存の手法では反応の完遂までに24時間を要したのに対して、本手法では1時間以内に定量的に終末端が官能基化され、テレケリックPPA類が得られることを見出した。本反応は温和な条件で進行し、官能基許容性も高いことから、今後のPPA材料開発を大きく加速すると期待される。 上述の重合において開始剤として用いた(1Z,3Z,5Z)-ヘプタアリール-1,3,5-ヘキサトリエニル基を有するロジウム錯体は、ヘキサトリエニル配位子に由来するらせんキラリティーを持つことが分かっている。このロジウム錯体から誘導されるトリエン化合物は立体配置が明確にシスであるポリ(ジフェニルアセチレン)(PDPA)類のオリゴマーとみなすことができることから、構造について未解明な部分の多いPDPA類の構造に関する重要な知見を与えると期待できる。そこでいくつかの誘導体を合成したところ、1H NMRよりらせんキラリティーを持つことが確認された上に、いくつかの誘導体については予備的に光学分割にも成功した。
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