研究課題/領域番号 |
22J10261
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
鎌田 斗南 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | Computational Origami / Computational Geometry / Polyhedra / Unfolding |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、多面体の展開図を理解するための新たな手法を確立することである。展開図とは、多面体の表面を(辺に限らず)自由に切り開いて得られる多角形の事である。再折りとは、多面体から展開図を作り、それを折り直すことで異なる多面体を得る操作の事である。再折りは「多面体を、合同な展開図を持つ多面体に変形する操作」と見做せる。本研究では、多面体の集合上で再折りによる遷移問題を考えることで、展開図の性質を明らかにする。今年度は、計画していた遷移可能性についての研究に加え、遷移不可能性についても前倒して研究を行った。 遷移可能性については、対称性が高い多面体や小頂点数の多面体の間に定数長の再折り遷移列が存在することを示し、査読付き国際論文誌 Computational Geometry - Theory and Applications において発表した。また、凹多面体を経由することを許容した場合の遷移の万能定理について、研究を行い、一定の成果を得た。この結果は、次年度にさらに拡充し、査読付き国際会議にて発表する予定である。 遷移不可能性については、展開図の頂点数を制約した場合、特殊な多面体クラス間で長さ1の再折り遷移列が存在しないことを示した。この結果を査読付き国際会議 The 34th Canadian Conference on Computational Geometry に投稿し、トロントにて発表を行った。現在は、展開図の頂点数を制約しないより一般的な結果を得ており、これは次年度に査読付き国際論文誌において発表する予定である。 上記の結果は、MITのErik Demaine教授のチームと共同で行ったものであり、次年度以降も継続して共同研究を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定とは異なるものの、順調に進展している 当初の予定では、初年度に再折りの遷移可能性、次年度に遷移不可能性について研究を行う予定であった。しかし、遷移不可能性についての研究が想定以上に順調に進んだことで、結果的には2つの方向について並行して研究を行うこととなった。遷移不可能性についての結果は、Spreading Treeと呼ばれる概念を導入したことで、大きく進展した。これは多面体間の2つの折り状態の間で、展開図の周上にどのような連鎖的対応関係が生じるかを記述したものである。Spreading Treeは、再折り可能性と不可能性の境界を明らかにする上で極めて有用な手法であるため、再折り可能性の研究にも大きな足がかりを与えるものであるといえる。また、Spreading Treeの概念は、複数の変形状態をもつ図形の問題に広く適用可能な普遍的な対象である。この性質をさらに深く研究することで、広く離散幾何学一般で価値をもつ研究手法の確立が期待できる。初年度に予定していた再折りの遷移可能性の計算機実験についても、Spreading Treeについての理論を反映した上で次年度に行うことで、より充実した結果につながると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、2つの側面から活動を行う。 1つ目は、初年度に足がかりが生まれた結果を深め、外部発表につなげる活動である。前述のように、初年度の研究の中で、遷移可能性と遷移不可能性の両側面で、再折りの性質の新たな側面を明らかにする結果の足がかりが掴めている。更なる議論や考察を重ね、これらの結果を国際会議や論文誌での発表にまとめることに取り組む。具体的には、(1)凹多面体を経由することを許容した場合の遷移の万能定理、(2)展開図の頂点数を制約しない場合の共通展開図の非存在性、(3)再折り遷移パスの構成に対する、計算機実験的手法の確立、の3つの課題に取り組む。 2つ目は、次のステップの研究へとつながる研究の枠組みの創出である。再折り遷移は、多面体状に組み上げられた二次元図形の形状を切断と接着で変形していく操作であるといえる。しかし、研究を行う中で、二次元図形の離散的な変形を計算機上で扱うこと自体の難しさに直面する場面があった。つまり、再折りによる変形問題の基礎として、多角形を切断して接着し直すことで別の多角形を作る"裁ち合わせ"と呼ばれる問題があることがわかってきた。再折りの問題と裁ち合わせの問題の間の共通点と違いを明らかにし、両者を統合した理論の創出に取り組む。
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