研究課題/領域番号 |
22J13824
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
塚本 祐作 山梨大学, 医工農学総合教育部, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | PSV / 可視化計測 / コード化照明法 / ストリークシミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究は地中熱ヒートポンプシステムの熱量評価技術への応用を念頭に,PSVと呼ばれる流体計測法の速度ダイナミックレンジや取得可能な速度ベクトル密度を改善する一連の計画に基づいている.本年度においては,コード化されたストリークを用いるPSVについて速度ダイナミックレンジや取得可能なベクトル数などを理論的および数値的な側面から評価する手法を開発した.まず理論的な側面からは,一様流における半導体レーザーの発光タイミングとコード化されたストリーク形状との関係を定式化し,形状に欠損のないストリーク数を最大化するための基本的な条件を明らかにした.一方,非一様流においては定式化された条件はすべての流れ場に共通な基準を与えないことから,数値流体解析とレイトレーシング法に基づく2次元ストリークシミュレーション技術を開発し,定式化された基準に基づいて最適照明時間を同定する手法を確立した.照明時間を最適化することによって,カルマン渦やランキン渦などの2次元流れにおいて取得可能なベクトル数が改善されることを確認し,約0.001 (vectors/pixel)のベクトル密度が達成された.このベクトル密度は標準的なPIVと同程度であり,コード化されたストリークが潜在的に1つのストリークから2つ以上のベクトルを取得できることからも,さらなるベクトル密度の改善可能性が示唆された.さらに,同シミュレーション技術をストリーク形状に影響を与える破壊因子の分析にも応用し,新たに5つに分類された破壊因子についてそれらの抑制に関わるいくつかの重要なパラメータを特定した.また,ストリークの端点を検出する従来の解析法と重心を検出する解析法を理論的に比較した結果,重心解析法では粒子像径の影響がキャンセルされることが明らかになり,速度ダイナミックレンジが2倍程度改善されることを示した.本成果はPSFVIP国際会議で発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,理論的および数値的な手法に基づいてコード化されたストリークの最適設計問題を解くことに成功した一方で,実験的な側面からPSVを評価するシステムの開発にはいくつかの技術的な課題が明らかになった.特に出力が1W以下の低出力半導体レーザーを用いる場合,明瞭なストリーク画像を取得するために導入されるヘリウム充填シャボン玉散布システムには,当初の推定よりも数倍程度高い散布密度が要求される見通しであり,実際の実験系を用いた妥当性評価などを実施できる目処が立っていない.現在,ヘリウム充填シャボン玉の散布密度や粒子直径などを改善するために,オリフィスキャップの設計変更や流量制御装置の変更などを中心とした改良を続けている状況にある.
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では,コード化されたストリークの特性や多時刻解析法の利用可能性などを実験的な側面からも評価する予定であったが,実験システムに技術的課題が発生している状況を鑑み,ストリークシミュレーション技術を用いた理論的,数値的な評価を先行して進めることにした.従って,次年度においては複数光源下におけるストリークの特性や,1つのストリークから2つ以上のベクトルを取得するための多時刻化ストリークなどを対象に,流れ場への適用性評価やストリーク最多配置条件の特定などに取り組む.一方,ヘリウム充填シャボン玉発生ノズルの改良も引き続き進行し,実験的な側面からもPSVを評価する.
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