研究課題/領域番号 |
21J21994
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
渡部 広機 信州大学, 総合医理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 超瞬間凍結 / 凍結保護剤フリー凍結法 / インクジェットプリンティング / セルプリンティング / Self-quenching / ガラス化評価 / CO2レーザ |
研究実績の概要 |
本研究では,CO2レーザを用いた世界最高速細胞解凍の実現と,凍結保存困難な生体試料への応用を目指している.R3年度は以下の項目について研究を行った. ・液滴単独落下解凍法の開発.冷却した基板に付着した凍結液滴を,衝撃により液滴単独で回収に成功した.これまでCO2レーザ照射による解凍は,凍結液滴を冷却基板に載せた状態で行う予定だったが,レーザ照射後の解凍済み液滴が冷却基板により冷却され再凍結する恐れがあった.そこで,凍結液滴を単独で回収する液滴単独落下解凍法を開発した.回収した凍結液滴を予温した培地で解凍したところ,基板分の熱容量が無くなり解凍速度が上昇したため,冷却基板とともに解凍した時より生存率が約10 %上昇した. ・Self-quenchingによるガラス化評価法の開発.冷却基板上で超瞬間凍結した液滴について,蛍光色素のself-quenching(自己消光)を用いたガラス化状態評価法を開発した.我々が目指すCO2レーザによる凍結液滴の解凍は,数ms内に解凍を終える見込みであり,ガラス化状態から解凍状態への変化を捉える事が困難であるため,新たな評価法が必要である.ここで一般に,蛍光分子は,分子間距離が一定以上縮むと分子同士が衝突または共鳴しself-quenchingを生ずる.一方で我々は,蛍光溶液を微小液滴で超瞬間凍結しガラス化することで,これが抑制されることを発見した.そこで,蛍光溶液を様々な凍結速度で凍結したところ,凍結速度に応じてself-quenching度合いが変化した.特に凍結速度が毎秒10,000 K以下では,液滴内に氷結晶によるself-quenchingが急増した.この速度で凍結した細胞は,解凍後の生存率が壊滅的だった一方,毎秒10,000 K以上ではself-quenchingが小さく,生存率も80 %近く,従来評価法と同様にガラス化を反映していた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,主にCO2レーザを配した超瞬間自動解凍装置の設計と製作を行う予定であったが,凍結した液滴のための液滴単独落下解凍法とガラス化評価法の開発と評価により進捗が遅れた. 当初の計画では,CO2レーザを冷却基板上でガラス化状態の液滴へ照射する予定であったが,解凍時に冷却基板による液滴の再凍結の恐れが強くなったため,新たに凍結液滴を単独で回収する液滴単独落下解凍法を開発した.他方で,凍結液滴へのCO2レーザの照射による解凍は数msで終える見込みであり,一般的なハイスピードカメラによる観察ではその変化を捉えられない.そこで,新たに蛍光色素のself-quenchingを用いたガラス化評価法を開発した.
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続きCO2レーザ超瞬間自動解凍装置の開発に取り組む.特に,レーザの光学系について,前年度に開発した液滴落下解凍法を組み込んだ解凍ユニットを開発する.また,同じく開発したガラス化評価を用いて,CO2レーザ照射による解凍時に結晶化が生じていないか確認する.そして開発した一連の凍結・解凍装置を用いて細胞凍結実験を行い,凍結解凍による細胞ダメージを評価する.さらに,次年度に行う長期保存に向けて専用の保存容器を開発する.
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