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2022 年度 実績報告書

抗生物質のポジティブな生理的作用の分子機構解明とその応用

研究課題

研究課題/領域番号 22J12518
配分区分補助金
研究機関信州大学
特別研究員 向井 慶一郎  信州大学, 総合医理工学研究科, 特別研究員(DC2)
研究期間 (年度) 2022-04-22 – 2024-03-31
キーワード抗生物質 / 放線菌 / リボソーム / 二次代謝 / 胞子発芽
研究実績の概要

微量の抗生物質は微生物に対して正の生理的効果を示すことがある。放線菌においては,低濃度の抗生物質存在下で生育や二次代謝能の向上が認められる。しかし,抗生物質のそのような濃度依存的作用については未解明な部分が多い。本研究では,低濃度下での抗生物質の生物学的役割を理解することを目的とし,以下の研究課題に取り組んだ。
検討課題1:放線菌Streptomyces coelicolor A3(2) 1147は低濃度の抗生物質リンコマイシン存在下で二次代謝産物を高生産する。本検討課題では,その分子メカニズムの解明に取り組んだ。その結果,低濃度のリンコマイシン存在下では,その標的であるリボソームが長時間に渡って安定化していることを突き止めた。培養後期におけるリボソームの安定化は,二次代謝産物の生合成遺伝子の活発な翻訳を可能にし,結果的に二次代謝の活性化が生じていることが明らかとなった。今後,更なる詳細な解析を必要とするが,リンコマイシンが放線菌に対してポジティブに働きかける仕組みの全容解明に向けた大きな手がかりを得た。
検討課題2:代表者は,低濃度の抗生物質には放線菌の胞子発芽を促進する効果があることを予備データから推測した。そこで本検討課題では,様々な抗生物質と放線菌を組み合わせ,抗生物質が胞子発芽に与える影響を検証した。その結果,抗生物質存在下で放線菌のコロニー形成数が増加する現象は,Streptomyces curacoi NBRC 12761とリボソームを標的とする抗生物質の組み合わせで顕著に認められた。以上の結果は,リボソームを標的とする抗生物質は濃度依存的に放線菌胞子の発芽を促進する作用があることを示唆した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本検討課題で予定していた研究計画は順調に進行し,研究成果として,学会発表(3件:国内学会3件)を行った。また,抗生物質が放線菌の二次代謝能を高める仕組みの解明については,リンコマイシン存在下でのリボソームの安定化にタンパク質分解者であるプロテアソームが関与するという新たな展開を見出した。

以上の理由から,現在までの進捗状況を「おおむね順調に進展している」と自己判断した。

今後の研究の推進方策

検討課題1:リンコマイシン存在下において,その標的分子であるリボソームが安定化することは判明したが,その安定化メカニズムについては未だ明らかでない。これまでの検討の中で,リボソームの安定化にプロテアソームが関与する可能性を見出している。今後は,放線菌の二次代謝を活性化する濃度のリンコマイシン存在下において,プロテアソームの発現や局在,活性などが変化しているかどうかを検討する。また,リボソームの安定化とプロテアソームの変化に関連性があるのか調べる。

検討課題2:リボソームを標的とする抗生物質の存在下において,放線菌Streptomyces curacoi NBRC 12761の胞子発芽率が高まることをこれまでに明らかにした。しかし,これまでの検討で用いた放線菌試料には,胞子だけでなく,菌糸や発芽中の胞子などが含まれていることが判明した。したがって今後は,放線菌胞子の精製法を確立し,精製した胞子を用いての検討を行う予定である。また,抗生物質存在下で放線菌の胞子発芽が高まる分子メカニズムの解析にも取り組んでいく。

以上,それぞれの研究を遂行し,国際学術誌へ2報の研究成果の発表を目指す。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] 抗生物質リンコマイシン存在下における放線菌のリボソーム安定化メカニズムの解析2022

    • 著者名/発表者名
      向井慶一郎,保坂毅
    • 学会等名
      第16回日本ゲノム微生物学会
  • [学会発表] 抗生物質がStreptomyces属放線菌のコロニー形成率を高める現象の解析2022

    • 著者名/発表者名
      向井慶一郎,吉松亜美,保坂毅
    • 学会等名
      日本農芸化学会2022年度大会
  • [学会発表] 抗生物質リンコマイシン存在下で放線菌のリボソームが安定化するメカニズムの解析2022

    • 著者名/発表者名
      向井慶一郎,柴山朋子,今井優,保坂毅
    • 学会等名
      第36回日本放線菌学会大会

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公開日: 2024-12-25  

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