研究課題/領域番号 |
22J40021
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 信州大学 |
特別研究員 |
関 有沙 信州大学, 理学部, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | 日本海 / 中新世 / 堆積物 / XRFコアスキャナー / ITRAX / 石灰質微化石 |
研究実績の概要 |
本研究では、ラミナ(平行葉理)構造を持つ日本海堆積物を用いて日本海中新世の古海洋環境変動を復元し、ラミナ堆積物の生成要因となった短周期(千年スケール)気候変動の要因を解明することを目的とする。合わせて、中・後期中新世の数百万年にわたる日本海の環境変化の復元も行い、上記の短周期気候変動がどのような時期に起こったのかを考察する。 令和4年度と令和5年度には、日本海海底堆積物コア(U1425地点・U1430地点)の分析を主に行なった。U1425地点とU1430地点から採取された中新世日本海堆積物には、これまで石灰質微化石はほとんど見つかっていなかった(Tada et al., 2015)。本研究では、石灰質微化石から古海洋環境変動を復元することを目的として、XRF(蛍光X線分析)コアスキャナー(ITRAX)で0.2mmから1cmの間隔で測定した堆積物の元素組成から、Ca(カルシウム)が高濃度で含まれている層準を選び出し、試料を採取して観察を行なった。特に、ラミナ堆積物に見られるmmスケールのCa濃集層準は通常の方法で試料採取を行うことは難しいため、爪楊枝で試料を採取してスミアスライドを作成して観察を行なった。その結果、Ca濃集層準は以下の4つに分類されることがわかった。 (1) 有孔虫が含まれる層、(2) 石灰質ナンノが含まれる層、(3) アパタイトが含まれる層、(4) コア保管時に二次的に生成した石膏が表面に析出している層 (3)と(4)はP(リン)やS(硫黄)などのXRFコアスキャナーで測定した他の元素で識別することが可能なため、当初目的とした石灰質微化石含有層(1)と(2)を、XRFコアスキャナーのデータのみから識別できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた堆積物コアからの試料分取と微化石の観察を令和4年度中に行うことができなかったため、令和5年度に延長した。令和5年度には、当初の予定通り、高知コアセンターに保管されている日本海堆積物コアからカルシウム濃度が高い試料を採取し、微化石の観察を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で得られた結果を基に、地球掘削科学コンソーシアム(J-DESC)のリポジトリコア再解析プログラム(ReCoRD)に、「中新世日本海の古気候・古海洋」と題した計画を筆頭提案者として提案し、採択された。本研究計画は令和6年度に実施予定であり、本研究で明らかになった石灰質微化石の濃集層準は、有孔虫や石灰質ナンノの専門家によって分析が行われる予定である。また、本研究で対象としたU1425地点・U1430地点のみではなく、1989年に採取された794地点・795地点・797地点の中新世日本海堆積物コアに対してもXRFコアスキャナー分析を行い、本研究の手法を適用して石灰質微化石の濃集層準を特定し、石灰質微化石の専門家へ試料採取層準の情報提供を行う。これにより、古海洋環境復元が行われると共に、既存の生層序年代モデルの改訂により環境変動の時期の推定精度も向上する見込みである。
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