研究課題
本研究では、糖転移酵素FUT8の機能制御メカニズムの解明を目的とし、特にオリゴ糖転移酵素(Oligosaccharyltransferase: OST)サブユニットによりFUT8の機能が制御される分子メカニズムに着目している。令和4年度で、OSTの12種類あるサブユニットのうちSTT3A、STT3B、KCP2、RPN1、OST48がFUT8と結合することが明らかになり、RPN1とRPN2がFUT8の酵素活性を正に制御することが明らかになったことを踏まえて、令和5年度ではNative-PAGEによってそれらサブユニットとFUT8との複合体形成を調べた。その結果、FUT8の複合体がOSTの複合体とほぼ同じ分子量に確認され、STT3AのノックアウトによってFUT8の複合体が減少することが分かった。また、STT3AとSTT3BのノックアウトによってRPN1は低分子量の分子種が確認され、この分子種がFUT8のノックアウトでも検出された。この結果から、現在FUT8がOSTの複合体形成や活性に与える影響を検討している。さらに、それぞれのOSTサブユニットの局在を免疫染色によって調べたところ、OST48やTMEM258などの一部のサブユニットがER以外の局在を示すことが分かった。また、これに派生する研究として、FUT8の切断、分泌について解析を行なっており、FUT8の分泌にはSPP、SPPL3が重要であることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
令和5年度では、OSTサブユニットとFUT8の結合に関してOSTサブユニットのKO細胞を使用して複合体形成を調べることができた。また、研究当初は予想されていなかった、FUT8がOSTの複合体形成に関与している可能性を発見しており、現在こちらについてOSTの活性の測定を試みている。さらに、FUT8の切断、分泌についても切断に関与する酵素を明らかにしており、この情報は今後OSTとの複合体形成をドッキングモデルなどで詳細に調べる際に重要な情報であると考えられる。これらの事実から、新たな発見に対して研究計画にはなかった実験によって詳細な解析を行いつつ、当初の研究目的に即して順調に研究が進展していると考えられる。
FUT8がOSTの複合体形成や酵素活性に与える影響について調べる予定である。そのため、OSTの活性をHPLCや電気泳動で検出することを試みている。また、FUT8とOSTサブユニットが細胞内のどこで相互作用するか不明であり、今後FUT8とOSTサブユニットの共局在を観察する予定である。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - General Subjects
巻: 1868 ページ: 130561~130561
10.1016/j.bbagen.2024.130561