研究課題/領域番号 |
22J12723
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
徳田 真穂 静岡大学, 自然科学系教育部, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | プラスミド / 宿主域 / 塩基組成 / 接合伝達 |
研究実績の概要 |
プラスミドが実環境中でどの細菌間を伝播しているか(宿主域)を,プラスミドや細菌染色体の塩基配列情報から網羅的に理解するため,接合実験によってプラスミドが伝播する細菌を同定し,塩基配列情報からの予測との照合・予測精度の向上を試みた. まず,網羅的にプラスミドの宿主域を同定するための接合実験の系を確立した.受容菌には,染色体配列が既知で培養可能な206株から構成された細菌カクテルを使用し,接合および接合完了体検出の条件を検討・決定した.現在はIncP-1,PromA群の他,既存のプラスミド群に分類されないものも含む計15種類のプラスミドについて,細菌カクテルとの接合実験を実施している.同時に,上記206株の細菌染色体と,プラスミド間の塩基組成の類似度を算出することで,プラスミドが伝播する細菌の予測を行った.その結果,15種類のプラスミドが高い類似度を示す細菌染色体が異なり,宿主域に違いがあると予測された.PromA群プラスミドについては,環境試料中の細菌群集との接合実験によって同定した宿染色体の塩基組成がプラスミドと類似する傾向が認められ,その研究成果についての論文を投稿した(2023年5月に採択通知). 並行して,プラスミド間の宿主域の違いをもたらす因子の特定を目指し,Pseudomonas属細菌を宿主とできるpBP136と,宿主とできないpDS1の複製開始タンパク質をコードするtrfA遺伝子と,複数のタンパク質が結合するoriV領域の入替を試みたが,当該領域の入替えたプラスミドは複製しなかった.これはpDS1由来のTrfAがpBP136のoriV領域に結合できないことが原因であると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに,受容菌候補となる,塩基配列が既知な206株の培養株からなる細菌カクテルを作出し,再現よく結果が得られるための条件検討を行った.現在,構築した実験系での接合実験を進めている.同時に206株の染色体とプラスミド間での塩基組成の類似度を算出し,宿主の予測を行った.また,プラスミドの宿主域の違いは塩基組成のみでは説明できないと考えられたため,モデルプラスミドは当初の計画よりも増やした15種類とし,機械学習による予測手法も取り入れた.また,プラスミドの環境中での宿主域に大きく影響する接合伝達頻度や安定性の違いを生む因子にも着目し,複数のIncP-1群プラスミドの性状を比較することで,各性状の違いを生む因子を探索している.以上の点から,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
1)プラスミドの宿主域予測法確立のため宿主・非宿主の情報を得ることを目的とし,モデルとする15種類の広宿主域プラスミドについて,作出した供与菌と,206株の既知の細菌から構成された受容菌群を用いた接合実験を行い,網羅的に宿主域を同定する.また,細菌群集との接合実験では伝達頻度の低い細菌は検出されないことを懸念し,206株の受容菌を1種類ずつ用いた接合実験も実施する. 2)プラスミド間の宿主域の違いをもたらす因子の特定を目指し,宿主域の異なるプラスミド間での複製に寄与する領域の詳細な比較を行う.当初計画していた2種類のプラスミドpBP136, pDS1間では,遺伝子領域の入替の実験系が構築できなかったため,中間の性質を示す他のIncP-1群プラスミドも対象にする. 3)得られた結果と,プラスミド-206株の細菌染色体間の塩基配列の非類似度の情報から,どのくらい塩基組成が似ていれば宿主となり得るのか,を示す閾値を特定する.同時に,接合実験で得た宿主・非宿主の情報を学習データとし,機械学習による予測も試みる.予測結果の評価は,所属研究室が保有する,既存のプラスミド群に分類されず,宿主域が全く未知のプラスミドを用いて行う.
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