研究実績の概要 |
接合伝達によって,どのプラスミドがどの細菌へ伝播するのか(宿主域)を,実験を行わずに予測する手法を確立するため,接合実験によって,プラスミドが接合伝達する細菌を同定し,塩基配列情報からの予測法を構築,照合と予測精度の向上を試みた. まず,網羅的にプラスミドの宿主域を同定するため,異なるグループ(IncP/P-1群, PromA群,未分類)に属する14種類のプラスミドと,全塩基配列が解読済みの124株の培養株を受容菌として1株ずつ用いて,総当たりの計1,736通りの接合実験を行った.プラスミドを受け取った受容菌のみが緑色蛍光を示すシステムを利用し,フローサイトメトリーを用いてその蛍光細胞の有無から,接合伝達の可否を評価した.その結果,1,736のプラスミドと細菌の組み合わせのうち,828で接合伝達が認められ,908で認められなかった.同時に,プラスミドおよび受容菌染色体の塩基配列から,GC含量およびk-mer組成の非類似度を算出後,それらを特徴量とし,接合実験の結果を学習データとした機械学習による予測モデルを構築した.学習データに含まれない,未分類かつ宿主域未知のプラスミドpYKAS102を対象とし,124株の受容菌との接合実験と,機械学習による接合伝達の可否の検証・予測を同時に行ったところ,79%(98 / 124株)で,予測結果と接合実験結果が一致した. 以上の結果より,本研究では,プラスミドと細菌染色体の塩基配列から,プラスミドを受け取ることができるかどうかを予測する手法を確立することに成功した.今後は,さらなるデータ量の追加や,予測法を検討することで,予測精度の向上が期待される.
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