研究実績の概要 |
本年度は、これまでの研究成果の公表準備を中心に活動を行った。まず徽宗期における宋代冊封の理念の変化とその背景を「政和の官制改革」との関係から検討し、唐末五代に中国から「独立」した北部ベトナム(大越)が、宋初の「統一」されるべき地域から中国の「外」という位置づけに変化していく過程を論じた。当該成果は「「十国」としての北部ベトナム」(山根直生編『五代十国:乱世のむこうの「治」』(アジア遊学291), 勉誠出版, 2023, pp. 235-256.)として公表した。 次に、既発表の「南宋期における外交儀礼の復興と再編:南宋の国際秩序と東南アジア・中国西南諸勢力」(『南方文化』44, 2018, pp. 1-23.)を、魯東大学の朱紅軍の助けを借りて中文に翻訳した。当該成果は、朱紅軍との共著の形で「南宋時期外交礼儀的復興与統合:南宋的国際秩序和東南亜及中国西南諸勢力」として中国の学術誌で公表する予定である。 さらに本年度は、宋代の対外関係における宋官僚による外交文書(表章)の代筆行為についても検討を行った。本研究は、現在成果としてまとめている段階であり、半年以内に日本の学術誌に投稿する予定である。 昨年度公表した「宋・東南アジア地域の関係史」(平田茂樹, 山口智哉, 小林隆道, 梅村尚樹編『宋代とは何か:最前線の研究が描き出す新たな歴史像』(アジア遊学 277), 2022年, 勉誠出版, pp. 249-260.)を含めれば、研究期間全体を通して、準備段階のものを含め4本以上の論文を成果として公表することができた。
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