研究課題
太陽系で最も火山活動が活発な木星衛星イオは比較惑星学的観点(地球やエウロパなどの氷衛星を考える上)で重要な天体である。イオの大気はSO2が主成分で、主に高温の火口からの直接噴出と降り積もった霜の昇華でできている。大気中の硫黄酸化物は最終的に解離し、中性原子やイオンとなって散逸し、プラズマトーラスをイオ軌道周辺に形成する。イオの地表面や大気、軌道の原子・イオンを多波長観測することは、イオ大気の生成・散逸過程、衛星の表層環境や火山活動、及び木星磁気圏への物質供給への理解につながる。研究代表者は海外の研究者と協力して、ひさき衛星のイオ中性トーラスの観測データの解釈のためのモンテカルロ数値シミュレーション計算を進めている。その結果、今まで等方的と考えられていたイオからのO原子の散逸が、実は非等方的であることを明らかにした。海外出張を行って、Magnetospheres of the Outer PlanetsやISSI workshop (MassLoss from Io's Unique Atmosphere: Do Volcanoes Really Control Jupiter's Magnetosphere)に参加し、自身のひさき衛星の観測結果及びALMAのアーカイブデータ解析結果を報告した。また、イオ中性トーラスと火山噴火の関係性に関して参加者と議論を行った。このISSI workshopは2023年9月にも開催される予定であるため、観測結果のアップデート及び惑星表層・上層大気における硫黄化合物の生成過程の実験に関する研究成果を発表できるように準備を進めている。
3: やや遅れている
海外の大学との共同研究によって、数値シミュレーション 計算を行い、イオの火山活動が静穏な時期の観測結果を比較した。 その結果、モデルに入力するパラメータを観測された酸素原子分布で制約し 、イオから散逸する酸素原子の方向が比等方的であることがわかった。一方で、ALMAのイオの大気観測のアーカイブデータ解析は遅れており、これまで出された論文では指摘されなかった成果を得ることができなかった。新たな成果を得るためには新規観測提案も検討する必要があるかもしれない。
最終目標はイオの大気分布とガスの散逸過程のつながりを明らかにすることである。そのために、本年度は火山活動度が変化したときにイオの大気の分布、中性トーラスの分布がどう変化するかをそれぞれ明らかにすることを目指す。昨年度に引き続き、海外との共同研究で数値シミュレーション 計算を行い、イオの火山活動が活発な時期の観測結果を比較した。制約されたパラメータを昨年度のデータと比較して、イオのガス散逸プロセスを考察する。一方で、ALMAのアーカイブデータ解析に関しては以下の通りに進める。まず新しく公開されたデータを新たに解析する。しかし、天候が悪いときに観測されたものであるため、解析結果はあまり期待できないかもしれない。このため新規観測計画を立案し、次年度のはじめにプロポーザルの提出を目指す。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
Journal of Geophysical Research: Space Physics
巻: 127 ページ: 1-19
10.1029/2022JA030581