研究課題
前年度で行った木星衛星イオの中性トーラス観測結果とシミュレーションの比較からイオ大気の散逸が非等方に行われていることがわかった。今年度はこの結果を論文として出した(Smith et al., 2022)ことに加え、これまでのひさき宇宙望遠鏡による観測データの結果を基に、イオの火山活動度の変化に伴う酸素原子中性トーラスの密度分布を導出した。この導出した数値とJohns Hopkins大学のとモンテカルロシミュレーションの比較を行い、イオから散逸するガス速度及び方向のパラメータの変化の議論を開始した。次世代紫外線望遠鏡によるエウロパプルームの将来観測可能性の評価も並行して行い、一定の成果が出たので学会で報告を行った。この検討は将来的にはイオの紫外線観測の提案にも活かされるはずである。申請者はMagnetospheres of the Outer PlanetsやISSI workshopに 現地参加し、ひさきやALMA(Atacama Large Millimeter/submillimeter Array)電波望遠鏡の観測データ解析の結果を報告し、イオからの大気散逸を議論した。イオのコロナ・トーラス領域の分子観測も重要であることがわかった。一方で国内・国際会議の議論イオの大気や中性トーラスの分布を説明する上で、それらの供給源として表面霜の特性を理解することが重量であることを再認識した。本研究の主題ではないものの、このデータを取得することにつながるように室内実験を進めている。
3: やや遅れている
昨年度まで進めた、これまでにアーカイブ化されたイオ大気のALMA観測データの解析・論文化はすでに他のグループによって行われているため昨年度より進めることができなかった。その代わり、ALMAによるイオのコロナ・トーラス領域の分子観測結果がアーカイブ化されたので、このデータの解析を開始している。
活動活動が活発な時の中性トーラスの分布の変動を見るため、比較用のデータの積分時間は静穏期のものより少なくなってしまう。そのため、精度が高いモデルフィッティングを実施できるように、ノイズの差分に用いるひさき衛星のキャリブレーション観測データを再度見直す予定である。活発期のイオから散逸する酸素原子のパラメーターが静穏期と比べて変化するかを議論することが最終年度の主題になる予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
Journal of Geophysical Research: Space Physics
巻: 127 ページ: 1-19
10.1029/2022JA030581