本年度はコロナウィルスの世界的蔓延により、研究計画の大幅な変更を余儀なくされた。当初はタンザニアに渡航し、野生のヌーの群れを対象に野外調査を行う予定であった。しかし、調査チーム自体の渡航が不可能であったため、本プロジェクトにおける野外調査をおこなうことができなかった。そこで、対象種に囚われず、野生動物の空撮動画から個体の行動データを取り出す手法の開発に焦点を当てて研究を遂行した。本研究では、ドローンを用いて、群れを空中から撮影し、一頭一頭の体の向きや視界の情報を取得することで、群れの移動と個体レベルでの情報の関連の解析を計画していた。この手法をさまざまな動物種で確立することで、本研究の対象種であるヌーの解析にもスムーズに繋げられると考え、ポルトガルの野生ウマおよび宮崎県串間市に生息する野生のニホンザル群を対象にデータ解析をおこなった。また、ニホンザルに関しては野外調査もおこなった。幸島にて野外調査を合計13週間おこない、ドローンを用いて野生ニホンザル群の行動を動画データとして取得した。この動画データを用いて、深層学習をベースにしたトラッキングプログラムを用いて、個体・頭部・首・尾部のトラッキングに成功した。さらに、トラッキングした各部位から個体の視線および視野の再構成にも成功した。当初の計画では、ヌーで確立したデータ取得及び解析手法を他の種に応用するという流れを思い描いていたが、その順番がただ逆になったということであり、本計画の遂行にあたり最低限の修正で済ますことができたと言える。
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