研究課題/領域番号 |
21J21236
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小島 慶太 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 量体化 / 短距離秩序 / 局所構造解析 |
研究実績の概要 |
当該年度はLi欠損体と母体LiVS2の多結晶、単結晶試料合成法の確立を行った。様々な合成条件のもと、今後物性測定などで必要となる多結晶試料や、1mmを超える試料の合成におおむね成功した。 得られた試料に関してはSPring-8のBL02B1ビームラインにて単結晶X線回折実験を実施し、試料クオリティを評価した。その結果、Li:Vが1:2となるように合成した試料においては試料内部のLi量が不足していることが明らかになった。溶液反応によってLiを挿入することを試みたが、幅が300μm以上の単結晶試料に対してはうまく挿入することができなかった。その一方で、2mm×200μmといったサイズを持つ試料においては内部までLiが挿入されていることが明らかになったため、今後の実験ではこうしたサイズを持つ試料を用いる。 また本年度は類縁構造体のLiVO2とLiVSe2についても構造研究を実施した。LiVO2においては、おそらく内部のLi配置の乱れによって、化学量論比からずれた試料において相転移温度が向上することが明らかになり、LiVO2がもつ「構造的フラストレーション」が物性に大きく寄与していることが明らかになった。またLiVSe2においてはLiVS2で現れる短距離秩序状態と等しいバナジウムのジグザグ鎖状分子が観測された。LiVSe2に現れるジグザグ鎖分子はLiVS2のものと比較してはるかに安定に存在しており、さらに高圧下においても維持されていることが明らかとなった。この事は本申請課題であるLiVS2のジグザグ鎖ダイナミクス解明の手掛かりとして非常に重要な事項となっており、LiVSe2ではダイナミクスが現れるのか、現在実験を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通り、LiVS2からLiが欠損したLixVS2について多結晶、単結晶試料の合成に成功した。得られた試料についてSPring-8等の放射光施設において回折実験を実施した。その結果、単結晶試料では目的とするLi量の試料が得られていることを確認した。多結晶試料については、いくつかの試料で不純物がごく微量混入していたが、それが物性に影響を与えないイオン結晶不純物であることが明らかになっており、今後の物性測定や短距離秩序構造解析に影響はほとんどない。 得られた多結晶試料について温度依存性を測定したところ、先行研究で報告されている相転移に対応して回折像の変化が見られた。回折像を比較すると今回合成した試料は先行研究の結果(相転移温度、回折パターン)を再現していることを確認した。 いくつかの組成比の試料においては基底状態の構造が未解明であるため、構造解明に挑戦した結果、x=0.5の試料において特徴的な原子変位が観測された。得られた構造について吟味はまだできていないため、今後精査する。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は合成した試料を用いて、LixVS2系について二体相関分布関数解析法を用いた局所構造解析を実施する。各試料について低温から高温まで幅広く実験、解析することによって、基底状態に対する構造の変化を長するとともに、Li量、温度に応じた短距離秩序状態についてどのような変化が現れるのか、特徴を持つのかについて明らかにするとともに、その電子状態について議論を進める。 また最終年度に実施を予定している各種時分割実験などについて予備実験を実施する。これらの時分割実験は非常に挑戦的であり、予期しないトラブルや問題が現れる事が考えられる。そこで次年度中に各種実験を最低1回ずつ実施し、問題点の洗い出しを行って次年度中にその解決策を準備する。
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