五、七、八員環など、六員環以外の芳香環を含むナノカーボンは「非ヘキサゴナルナノカーボン」と呼ばれ、ワープドナノグラフェン、[7]サーキュレンなどが代表例として知られている。これらの分子は湾曲構造、導電性、磁性、光学活性などにより、構造有機化学や材料科学など様々な分野で注目を集めている。しかし、非ヘキサゴナル骨格はその構築自体が難しく、特に七員環を含む非ヘキサゴナル芳香環の構築は、酸化的脱水素環化反応や七員環骨格を有する基質を出発物質とする方法などに限られている。そのため多種多様な構造をもつ含七員環ナノカーボンの自在合成法は確立されているとは言えず、新たな効率的七員環骨格構築法の開発が望まれている。そこで本研究では既存の六員環構築法の適用拡大や新たな反応開発を行うことで選択的かつ簡便に七員環を構築することが可能であると考えた。これまでにパラジウム触媒による分子内環化法を用いた七員環構築反応について、反応の条件検討、基質適用範囲の調査、量子化学計算による反応機構の詳細な検討などを行っており、最終年度は本反応について、種々データをさらに収集し、それらをまとめ学術誌に投稿した。また新たにベンゾフルオレノンメチルオキシム誘導体とロジウム触媒を用いて、アルキン環化反応によるπ拡張4-アザアズレンの効率的な合成法を開発した。開発した反応により、新規骨格となるπ拡張4-アザアズレンを良好な収率で合成に成功した。合成された4-アザアズレン含有PAHは、アズレンの特性とπ拡張、窒素ドーピングの効果を反映し、500-800nmに長波長シフトした吸収を示した。この成果は近日中に論文投稿予定である。研究期間全体を通してパラジウムまたはロジウム触媒による分子内・分子間C-H活性化反応を軸とした新たな効率的七員環構築法を開発し、合成した含七員環化合物のユニークな物性について明らかにした。
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