研究課題/領域番号 |
21J22850
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
久田 拓海 名古屋大学, 創薬科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 品質評価 / 抗体生産細胞 / 画像解析 / 細胞形態解析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、細胞の形態解析による品質評価技術を発展させ形態変化の少ない浮遊系細胞にも応用することで、抗体医薬品製造で求められている細胞品質低下のリアルタイムな検出系を実現することである。これまで接着系細胞に対して開発されてきた形態解析による細胞品質評価技術を、製造現場で求められるニーズを満たす新しい応用事例・製造現場のニーズまで引き上げる技術開発研究である。 当該年度は、抗体医薬品の生産現場で重要となる、抗体生産能の低下および向上を起こした培養条件を用いた実験を行い、培養中の細胞画像を取得した。それぞれの培養条件において、画像解析によって経時的な品質変化を追うことによりどの時点から品質変化が起きているのかを検出できる可能性が示された。これは、本テーマにおける目標である「抗体医薬品製造で求められている細胞品質低下のリアルタイムな検出系の実現」に関して重要な進捗であると考える。 来年度はこの実験データを用い、さらなる目標である「細胞形態情報のみを用いた抗体生産能の評価系の開発」及び「細胞集団内における品質のばらつき評価の実現」に注力する。特に後者は、他の測定機器では困難な精度の評価であるが製造現場で求められている技術であるため、社会的意義が高いと考える。 また当該年度は、以前に開発した細胞画像情報解析プログラムのアプリ化を行った。直感的であるため操作性が向上したことと、確認すべきデータを一気に出力しやすくなったことからデータの確認・検証がしやすくなったと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞の形態解析による品質評価技術を浮遊系細胞に応用させるため、これまでに画像取得プロトコルの再検討と新規特徴量の開発を行ってきた。細胞の代謝経路に作用する化合物を添加した結果、浮遊系細胞におけるわずかな品質変化を細胞画像から検出できることが示されてきた。更に、検出感度を向上させるために新規の画像解析プログラムおよび特徴量を開発した。 昨年度は、抗体医薬品の生産現場で重要となる、抗体生産能の低下および向上を起こした培養条件を用いた実験を行い、培養中の細胞画像を取得した。それぞれの培養条件において、画像解析によって経時的な品質変化を追うことによりどの時点から品質変化が起きているのかを検出できる可能性が示された。この実験データを用い、さらなる目標である「細胞形態情報のみを用いた抗体生産能の評価系の開発」及び「細胞集団内における品質のばらつき評価の実現」に注力し、抗体生産の現場で求められる細胞品質評価系としてまとめる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、昨年度に取得した実験データを用いてヘテロ性評価のアルゴリズム開発に注力し、論文化への準備を進める。 またこれまで、共同研究においてシングルセルレベルでのRNA-seqデータ解析に注力していた。遺伝子解析における様々な工程のデータを精査した経験から、形態変化の生物学的機構の解明のためのゲノム解析能力を習得できたと考える。この経験を活かした、ゲノム編集技術及びゲノムシャッフリング技術を使用して抗体医薬品製造において検出が求められる遺伝子変異を模倣した細胞株を構築した実験も計画している。
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