研究課題/領域番号 |
22J01254
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
谷隅 勇太 名古屋大学, 医学系研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | 2光子顕微鏡 / オプトジェネティクス / ホログラフィック顕微鏡 / 感覚皮質 / 連合学習 / セル・アセンブリ |
研究実績の概要 |
脳を構成する神経細胞は,然るべき瞬間に秩序立った信号を繰り返し奏でることで,動物の柔軟な知覚学習機能を成立させる.このメカニズム解明は生命現象の理解に必須であるが,ミリ秒レベルでの神経時系列変化と,学習に伴う動物の行動変化との因果関係を調べる実験系は未発達かつ精度が足りない.そこで本研究では,神経計測をしながら,個々の活動をミリ秒スケールで操作可能なホログラフィック顕微鏡技術を用いることで,局所回路の時空間活動パターンと動物の行動との因果関係を解明することを目標にした.本年度は主に以下2項目に取り組んだ. 1) 神経活動操作および行動データ取得基盤の構築:生理学研究所にて,新たなホログラフィック顕微鏡システムの構築を行った.マウスを用いて,感覚刺激と報酬の連合学習系を2光子顕微鏡下に構築し,行動タスク中の任意のタイミングで,特定の細胞を任意の時空間活動パターンで活性化させるシステムに関して,ハードウェアおよびソフトウェア開発を行った.顕微鏡視野内の細胞を自動抽出し,光刺激可能細胞・行動タスクイベント応答細胞のラベル付けを行うシステムの整備を完了させた.今後,特定の行動と,人工的に発生させた時空間活動パターンを連合学習させた後,活動パターンを規則的に崩すことで,知覚成立に必要な活動要素の時空間分解能を明らかにする. 2) ホログラフィック顕微鏡システムで得たカルシウムイメージングデータ解析・応用:学習行動中および光刺激中のマウスから,ニューロンのカルシウムイメージングデータを取得して解析した.ホログラフィック顕微鏡システムを通じて,節水したマウスに「数十個の細胞群(セル・アセンブリ)を光活性した後,舌なめ行動をすることで水報酬が得られる」行動を学習させることに成功した.学習後,光活性させる細胞数を徐々に減らし,細胞数と知覚度の関係を表す知覚検出曲線を計算するシステムを構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた,神経操作および行動実験環境の構築,カルシウムイメージングデータの収集,神経操作応用実験の準備について,おおむね達成することができた.予想外の事態として,光遺伝学的手法を用いた実験のウイルス発現における不具合があったが,結果をもとに再調節を行うことで研究を進展させた.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,特定の行動と,人工的に発生させた時空間活動パターンを連合学習させた後,活動パターンを規則的に崩すことで,知覚成立に必要な活動要素の時空間分解能を明らかにする.さらに,感覚および報酬情報を両方受けとる感覚皮質ニューロン群の活動が,動物の行動や学習率に与える影響力を調べる.これにより,感覚情報と行動意欲を結びつける神経回路機構のモデル開発を試み,学習した情報を局所回路に効率的に書き込む方法論を確立する.
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