本研究は触媒反応に対して活性を示しうる金属錯体触媒の開発、それを含む人工DNA鎖の合成、合成したハイブリッド触媒系の電気化学的反応への応用の3ステップからなる。採択期間において、申請者はイリジウム、オスミウム、ルテニウム、鉄などをそれぞれ含む金属錯体を新たに開発し、可視光照射下においてこれらが二酸化炭素還元反応に対して優れた触媒活性を示すことを見出している。類似の配位子を用いているのにも関わらず、中心金属の種類によって生成物選択性や触媒の性能・耐久性が大きく変化することは特筆すべき点である。また、電気化学測定や過渡吸収分光測定を用いることで、その反応機構に関して多くの重要な知見を得ることに成功した。一部錯体の研究結果は国際論文誌への掲載に向けて現在査読中であり、またその他の研究結果は査読を経て国際論文誌に既に掲載済みである。 採択期間において、全体としておよそ3分の1の研究計画が完了した。申請書2ステップ目の人工DNA鎖の合成まである程度方法を確立することに成功したが、これに金属錯体を導入するステップにおいて、金属錯体に必要な置換基を導入する方法を確立することができなかった。この理由に関して、金属錯体のリン配位子が高い反応性を有しており、置換基導入における種々の反応剤と望まない副反応を引き起こしたためであると考えている。副反応を起こしにくい置換基導入法の開発、あるいはリン配位子を強力に保護する方法の開発が不可欠であると考えられる。
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