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2022 年度 実績報告書

環境・行動・ストレス計測による、海鳥の採餌戦略および繁殖戦略の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22J14219
配分区分補助金
研究機関名古屋大学

研究代表者

小山 偲歩  名古屋大学, 環境学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2022-04-22 – 2024-03-31
キーワード海鳥 / バイオロギング / 酸化ストレス / 移動経路 / 海洋環境
研究実績の概要

本研究では育雛期の海鳥に対して、ロガーによる行動記録と、ヒトの医療分野やスポーツ科学で疲労度の指標として利用されている酸化ストレス計測を用いて、海鳥の採餌行動を解明することを目的とした。野外調査を新潟県粟島で育雛中のオオミズナギドリに対して行なった。オオミズナギドリ28個体を捕獲し、採血と体重計測を行なった後に、GPSと加速度を記録する小型記録機器を海鳥の背中に防水テープを用いて装着し、放鳥した。放鳥1日から13日後に合計23個体を再捕獲し、採血とロガー回収、外部形態計測を行なった。また、採血を行わないコントロール個体に対しても、小型記録機器の装着および回収を行った。また、ヒナ20個体に対して体重および外部形態の計測を行い、繁殖成績を記録した。さらに、行動記録を行った個体のヒナに対して、ボイスレコーダーを用いた餌乞いの記録を行った。
回収したロガーデータから、親鳥の移動距離・移動時間・運動量などを取得した。血液サンプルから、フリーラジカル計測装置を用いて、酸化ストレス値を定量化した。得られた結果をもとに、親鳥の酸化ストレス値が、直後の移動距離や移動時間に影響するか明らかにするために解析を行った。また、海洋環境と海鳥の行動・繁殖の関係解明にも取り組んだ。海洋環境として、海表面水温やクロロフィル濃度などの物理指標と、漁獲データから推定した魚の資源量を利用した。その結果、親鳥が海表面水温データで示される餌利用可能性の高い場所を利用している可能性を示した。これらの結果を国際鳥学会、生態学会等で発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2022年度は、新潟県粟島のオオミズナギドリに対する野外調査を計画通り実施し、23個体の行動データと酸化ストレス値を得ることに成功した。得られた行動データから親鳥の移動距離・移動時間・運動量を算出し、小型記録機器装着時の親鳥の酸化ストレス状態と関係があるかを検証した。また、海洋環境と海鳥の行動・繁殖の関係解明について、物理要因と海鳥の行動や繁殖の関係、魚の資源量と海鳥の行動の関係を明らかにした。この結果は、今後、海鳥の採餌戦略を生理状態の観点からも理解する上で重要である。以上より、当該研究はおおむね順調に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

2023年度も野外調査により、オオミズナギドリの行動と酸化ストレスデータを取得する。野外調査はオオミズナギドリの育雛期である8月から行い、GPSおよび加速度を記録する小型記録機器の装着および回収を行う。装着時および回収時に、酸化ストレス計測に利用する血液サンプルを下肢静脈より採取する。採血量は個体の生存や行動に影響のない、1ml以下および体重の1%以下とする。また、ヒナから親への要求を評価するために、行動記録を行った個体のヒナに対して体重計測・外部形態計測・ボイスレコーダーによる餌乞いの記録などを行う。調査終了後、記録機器により記録したGPSおよび加速度から、移動経路・移動時間・採餌場所・動きの大きさなどを算出する。血液試料から、フリーラジカル解析装置を用いて酸化ストレスを計測する。野外調査により取得したヒナのデータから、ヒナの体格に対する体重の重さ・餌乞い回数を算出する。得られたデータを解析し、親の採餌場所や深度と酸化ストレスの関連性や、雛の状態や餌乞いが親の行動や酸化ストレス変化に及ぼす影響を一般化線形混合モデルなどにより明らかにする。また、2022年度に得られた成果をもとに、海洋環境・海鳥の行動・生理状態・繁殖成績の関係を、パス解析を用いて明らかにする。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Quantifying annual spatial consistency in chick-rearing seabirds to inform important site identification2023

    • 著者名/発表者名
      Martin Beal, Paulo Catry, Richard A. Phillips, Steffen Oppel, John P.Y. Arnould, Maria I. Bogdanova, Mark Bolton, Ana P.B. Carneiro, Corey Clatterbuck, Melinda Conners, Francis Daunt, Karine Delord, Kyle Elliott, Aymeric Fromant, and other 33 authors including Shiho Koyama
    • 雑誌名

      Biological Conservation

      巻: 281 ページ: 109994~109994

    • DOI

      10.1016/j.biocon.2023.109994

  • [雑誌論文] Pelagic seabirds reduce risk by flying into the eye of the storm2022

    • 著者名/発表者名
      Lempidakis Emmanouil、Shepard Emily L. C.、Ross Andrew N.、Matsumoto Sakiko、Koyama Shiho、Takeuchi Ichiro、Yoda Ken
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences

      巻: 119 ページ: 1~7

    • DOI

      10.1073/pnas.2212925119

  • [学会発表] 海鳥の移動経路・繁殖成績の長期観測および周辺環境との関係解明2023

    • 著者名/発表者名
      小山偲歩、依田憲
    • 学会等名
      第70回生態学会自由集会LT of LT :長期観測・時系列データ ライトニングトーク
  • [学会発表] A 11-years bio-logging study of streaked shearwaters provides a linkage among their foraging behavior, reproductive performance, and oceanographic conditions2022

    • 著者名/発表者名
      S. Koyama, Y. Mizutani, S. Matsumoto, K. Yoda
    • 学会等名
      International Ornithology Congress 2022
    • 国際学会

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公開日: 2023-12-25  

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