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2022 年度 実績報告書

気孔孔辺細胞における網羅的ホスホプロテオミクスに基づく気孔開口の分子機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22J14777
配分区分補助金
研究機関名古屋大学

研究代表者

深津 孝平  名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2022-04-22 – 2024-03-31
キーワード植物生理学 / 気孔
研究実績の概要

植物に存在する気孔は一対の孔辺細胞からなる孔であり、光などの環境の変化に応答して開閉することで大気とのガス交換を調整している。これまでの研究から気孔の開口にはリン酸化などを介したシグナル伝達や浸透圧の調整が重要であることが示された。しかしながら、気孔開口メカニズムには未解明な点が多く存在している。そこで、私はソラマメの孔辺細胞プロトプラストを材料とした網羅的なホスホプロテオミクスを行い、新規気孔開口関連因子を複数同定した。その中で気孔開口時に浸透圧調整物質として働くリンゴ酸の合成律速酵素であるホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPC)や気孔開口のキーエンザイムである細胞膜プロトンポンプの新規リン酸化を見出した。2022年度はPEPCの解析を進め、第64回日本植物生理学会とAmerican Society of Plant Biologistsに参加し、発表と意見交換を行った。
また、ホスホプロテオミクスによって見出した細胞膜プロトンポンプの新規リン酸化部位のアミノ酸置換形質転換体の解析を進めることで細胞膜プロトンポンプの新規部位のリン酸化が気孔開口に影響を与えることを明らかにした。さらに、変異体における新規リン酸化の解析や研究促進のために孔辺細胞における細胞膜プロトンポンプの新規部位のリン酸化を免疫組織化学染色によって検出することを可能にした。この手法により新規部位のリン酸化についてさらに解析を進め、論文としてまとめ投稿をした。
ホスホプロテオミクスでは他の候補も得られており、これらがPEPCや細胞膜プロトンポンプのリン酸化に影響する可能性が考えられたため、T-DNA挿入変異体の気孔開口表現型も順次調べている。現在、複数の気孔開口に影響を与えた因子が得られたため冗長性がある因子について多重変異体の作成を進めた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2022年度の研究ではホスホプロテオミクスで同定した細胞膜プロトンポンプの新規リン酸化部位の1つが気孔開口に影響を与えることを明らかにできた。しかしながら、細胞膜プロトンポンプには他にもリン酸化レベルが変動したリン酸化部位が存在する。2022年度の研究では他のリン酸化部位についても免疫組織化学染色の確立やアミノ酸置換形質転換体の気孔表現型解析を進めたが、リン酸化を誘導する環境シグナルの同定に難航している。そこで、孔辺細胞における細胞膜プロトンポンプのリン酸化制御機構の解析のために他のリン酸化部位についても解析を進める必要があると考える。
PEPCの解析では先行していたPEPC2についてはPEPCKの遺伝子発現の解析などによるリン酸化の要因の調査や化合物添加による気孔開口に影響を与える要因についての解析を進めた。しかしながら、主要なPEPC1、PEPC2の多重変異体の作成に難航しており、PEPC1が気孔開口に関与するかどうかを明確にできなかった。そこで、気孔開度表現型についてはPEPC2のみに着目し、PEPCのリン酸化の要因について解析を進めている。
また、他の候補については遺伝子的な冗長性をもち、シングル変異体では気孔開度表現型が確認できなかったものが多かったため多重変異体を作成している。今後、PEPCや細胞膜プロトンポンプのリン酸化への影響を調べていく予定である。

今後の研究の推進方策

PEPCのリン酸化の要因についてはより詳しく解析を進める予定である。これまでの解析でPEPCKの遺伝子発現は細胞膜プロトンポンプの活性化に依存していると考えられる。これを明らかにするために細胞膜プロトンポンプの変異体に加え、化合物によって細胞膜プロトンポンプの活性化を調節した時のPEPCKの遺伝子発現について解析していく。また、PEPCKがどのようにして細胞膜プロトンポンプの活性化を受けるのかを明らかにするために孔辺細胞プロトプラストを材料としたトランスクリプトーム解析を行う予定である。また、作成している他の候補の多重変異体の気孔表現型解析を進め、気孔開口に影響が見られた変異体についてPEPCのリン酸化に影響を与えるか調べていく。この様にして明らかになった結果を論文としてまとめ報告を行う。
また、細胞膜プロトンポンプのリン酸化制御の解析では、他のアミノ酸置換形質転換体の解析と環境シグナルの探索を行う。リン酸化部位の気孔開口への影響については2022年度の研究に則り解析を進めていく。新規部位のリン酸化誘導にはこれまで化合物を用いてきたが、環境シグナルの同定では化合物から予想できる要因の他に植物ホルモンなどのシグナル伝達による影響も考慮し、植物ホルモンの添加や変異体についてリン酸化挙動を調べていく。またこちらの解析でも他の候補におけるリン酸化変動を調べ、分子機構の解明を進めていく。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [学会発表] 気孔孔辺細胞において青色光によりリン酸化レベルの変動するタンパク質の機能解析2023

    • 著者名/発表者名
      深津孝平、林優紀、鈴木孝政、桑田啓子、木下俊則
    • 学会等名
      第64回日本植物生理学会 仙台大会
  • [学会発表] Analysis of phosphoenolpyruvate carboxylase in stomatal guard cells2022

    • 著者名/発表者名
      Kohei Fukatsu, Yuki Hayashi, Takamasa Suzuki, Keiko Kuwata, Toshinori Kinoshita
    • 学会等名
      American Society of Plant Biologists
    • 国際学会
  • [備考] 研究業績-原著論文|名古屋大学 植物生理学グループ

    • URL

      http://plantphys.bio.nagoya-u.ac.jp/achievement.html

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公開日: 2023-12-25  

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