研究課題
イヌの変性性脊髄症 (DM)の病因タンパク質であるSuperoxide dismutase-1 (SOD1)の疾患変異体E40Kは、DM罹患犬の脊髄運動神経細胞内に凝集体を形成する。この凝集体が神経細胞へ毒性を発揮すると考えられ、凝集抑制はDMの治療標的の1つとされる。 SOD1はヒトの筋萎縮性側索硬化症 (ALS)の病因タンパク質の1つでもあるが、興味深いことにE40K変異はヒトSOD1には凝集を誘導しないことが報告され、追試により確認した。申請者は、このE40K変異による凝集性の種差がイヌおよびヒトSOD1の117番目のアミノ酸残基に依存していることを突き止めた。タンパク質結晶構造解析などのさらなる詳細な検討により、イヌSOD1におけるこの凝集はタンパク質内部の疎水性コアの脆弱性に起因することを明らかにした。以上の研究成果を原著論文にまとめ、米国学術誌Journal of Biological Chemistryに報告した。 次に、E40K変異体の凝集機序に対応した治療候補薬の効果を検証するためにDMモデルマウスの作製に着手した。ヒトSOD1プロモーターおよびヒトSOD1ゲノムを搭載した既存の発現コンストラクトを利用し、イヌSOD1のエクソンおよびヒトSOD1のイントロンを組み合わせたキメラコンストラクトを作製して培養細胞に導入したところ、イヌSOD1の発現を確認した。以上、本研究からE40K変異によるイヌSOD1の特異的凝集機序が明らかになった。本研究成果は、DMに対する新規治療戦略の基盤となると考えられる。また、DMモデルマウスの個体化は、岐阜大学との共同研究の形で継続し、作製された個体を用いて前臨床試験が可能となることが期待される。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Journal of Biological Chemistry
巻: 299 ページ: 104798~104798
10.1016/j.jbc.2023.104798