現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はC-Sapphire基板上にCPMN (110) 方向のエピタキシャル成長に成功した。得られた薄膜の面直格子定数がPd組成に線形の依存性を示すことからPdが充填型β-Mn構造の磁気副格子 (8cサイト) にドープされることを示した。全ての組成においてCPMN薄膜試料は反強磁性相転移 (TN) とスピンリオリエンテーション転移 (TSR) の2つの磁気相転移を示すことを明らかにした。Pd組成 x>0.6 の領域でネール温度の上昇および飽和磁化の増大が観測されることを示した。この結果はPdドープによるDMIの増大とフェルミ準位近傍の価電子状態密度の増大によりスピンキャンティングの形成されることによると結論づけた。さらに、2つの磁気相転移とスピンキャンティングの形成により、CPMN (x = 0-1.61)の磁気相図はSpiral-Ⅰ(x<0.6,T<TSR), AFM-Ⅰ(x<0.6,TSR<T<TN), Spiral-Ⅱ(x>0.6,T<TSR) およびAFM-Ⅱ(x>0.6,TSR<T<TN) に大きく分類される4つの磁気状態からなることを示した。Spiral-Ⅱ相におけるトポロジカルホール効果およびNCMRの測定から、この相において強磁性スキルミオンが形成される可能性を示した。一方で、AFM-Ⅱ相においては、トポロジカルホール効果が消失し、NCMRが観測されることを見出した。さらに、巨大な異常ホール効果が温度によらず、TN以下の温度領域において観測されることを示した。観測された巨大な異常ホール効果は実空間におけるトポロジカルなスピン構造の存在に起因すると考えられることから、以上の結果はAFM-Ⅱ相において反強磁性スキルミオンが生成されていることを示唆すると結論づけた。
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