今年度はマイクロ波帯及びミリ波帯で動作するGaN IMPATTダイオードの高出力化・高周波化に向けてデバイス構造の改善に取り組んだ。 マイクロ波帯での高出力化に向けて、昨年度検討したp+-n接合界面に高濃度n型層を挟んだp+-n+-n-n+構造を引き続き検討した。電界分布が出力特性に与える影響について、n層の不純物濃度を変化させることで調べた。その結果、動作周波数(15 GHz)に対して最適な出力が得られる不純物濃度があることがわかり、動作周波数15 GHzでパルス出力25 Wの特性が得られた。これは、GaN IMPATT ダイオードにおいては突出したものであり、これまでに報告されているSi、 GaAsで作製されたIMPATTダイオードでのトップデータに並ぶ出力であった。また、電力密度に換算するとSi、 GaAsを上回る結果であり、GaN IMPATTダイオードの高出力発振素子としての優位性の一端を示すことができた。 加えて、高周波化という観点では、ミリ波帯でのGaN IMPATT ダイオードの動作実証を目的に、昨年度作製したWR-34空洞共振器を用いて、30 GHz超のミリ波帯で動作するGaN IMPATTダイオードの作製を行った。引き続き、p+-n+-n-n+構造を採用し、n層幅をより狭くしたダイオードを作製した。発振特性を評価したところ、18-38 GHzにわたる多周波数動作での発振が確認でき、ミリ波帯での発振が実現できた。
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