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2022 年度 実績報告書

現代的な星形成理論構築に向けた、分子雲におけるフィラメント構造の進化過程の研究

研究課題

研究課題/領域番号 22J15861
配分区分補助金
研究機関名古屋大学

研究代表者

安部 大晟  名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2022-04-22 – 2024-03-31
キーワード星形成 / 磁気流体力学 / 星形成フィラメント / 分子雲 / 衝撃波
研究実績の概要

星は銀河中の水素分子からなる分子雲の高密度領域で形成される。観測によって、その高密度領域がフィラメント状であることが分かった。よって、星形成過程を理解するためにはフィラメントがどのように進化し星形成に至るかを知る必要がある。観測結果からフィラメントは線密度によらず0.1 pc の幅を持っていることがわかっている。しかしながら、高い線密度のフィラメントは自己重力が強いので細くなるという理論的示唆があり、観測結果と矛盾している。この問題は10年以上誰も解けなかった未解決問題である。本研究では現実的なフィラメント進化過程を解明しこの矛盾を解くことを目的とし、大規模磁気流体シミュレーションにより研究を行った。使用するコードはこれまでにも利用してきた自己重力入りの磁気流体コードであるAthena++を用いる。Athena++はガスと磁場が結合する枠組みである理想磁気流体力学の方程式を解くが、フィラメントのような強磁場下ではガスと磁場の結合が破れる両極性拡散が起こる。本研究では両極性拡散を取り入れた計算を行う。フィラメントの幅を 0.1 pc に保つ候補機構としてフィラメント内に駆動された乱流の動圧がある。フィラメントの進化過程ではフィラメントへのガス降着が起こっており、降着流がフィラメントにぶつかるところで「遅い磁気流体衝撃波」を立てると考えられる。遅い磁気流体衝撃波面は不安定であり、この不安定性がフィラメント内部に乱流を駆動してフィラメントの幅を保つのに必要な乱流圧を与えるかどうかをシミュレーションにより調べた。その結果、磁気流体不安定性と磁気拡散の組み合わせによって起こる、フィラメント内部に効率よく乱流を駆動できる機構を発見した。さらに観測されているような大質量フィラメントの幅を測定したところ約0.1pcであり、観測結果と整合的な結果を得た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究では両極性拡散を取り入れた計算を行った結果、磁気流体不安定性と磁気拡散の組み合わせによって起こる、フィラメント内部に効率よく乱流を駆動できる機構を発見した。普通、磁気拡散は不安定性を抑え乱流駆動には不利なセンスに働くが本研究では意外なことにこの磁気拡散がフィラメント内部に乱流を引き起こす重要な役割があることがわかった。この結果は予想しておらず、新しい現象を発見できた。我々はこの機構をBullet機構と名づけ、その性質を調べるという新しい研究テーマを打ち出すことに成功した。さらに観測されているような大質量フィラメントの幅を測定したところ約0.1pcであり、観測結果と整合的な結果を得ており全てうまくいっている。

今後の研究の推進方策

大質量フィラメントにおいて、観測結果と整合的な結果を得たが、あくまでこれは一つの例の話である。大質量フィラメントの幅の維持機構を発見したが、これが観測全てを説明できるかはパラメータサーベイによりこれから調べなければならない。またフィラメントの線密度の頻度分布関数の起源を求める研究は手をつけられておらずこれから行う予定である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] The Effect of Shock-wave Duration on Star Formation and the Initial Condition of Massive Cluster Formation2022

    • 著者名/発表者名
      Abe Daisei、Inoue Tsuyoshi、Enokiya Rei、Fukui Yasuo
    • 雑誌名

      The Astrophysical Journal

      巻: 940 ページ: 106~106

    • DOI

      10.3847/1538-4357/ac9e55

  • [学会発表] 大質量フィラメントの幅の維持機構2023

    • 著者名/発表者名
      安部大晟, 井上剛志, 犬塚修一郎
    • 学会等名
      日本天文学会 春季年会
  • [学会発表] 大質量フィラメントの幅の維持機構2023

    • 著者名/発表者名
      安部大晟, 井上剛志, 犬塚修一郎
    • 学会等名
      新学術領域「星・惑星形成」2022年度大研究会
  • [学会発表] 大質量フィラメントの幅の維持機構2023

    • 著者名/発表者名
      安部大晟, 井上剛志, 犬塚修一郎
    • 学会等名
      近傍宇宙の観測的研究で探る星間物質ライフサイクル
  • [学会発表] 隣接した MHD slow mode shock の安定性2023

    • 著者名/発表者名
      安部大晟, 井上剛志, 犬塚修一郎
    • 学会等名
      日本天文学会 春季年会
  • [学会発表] 分子雲における星形成フィラメントの形成と進化2023

    • 著者名/発表者名
      安部大晟, 井上剛志, 犬塚修一郎
    • 学会等名
      つくば宇宙フォーラム
    • 招待講演
  • [学会発表] MHD simulations to Understand the Evolution of Star-forming Filaments2022

    • 著者名/発表者名
      Abe D., Inoue T., Inutsuka S.
    • 学会等名
      The 9th East Asian Numerical Astrophysics Meeting (EANAM9)
    • 国際学会
  • [学会発表] 分子雲における星形成フィラメントの形成と進化2022

    • 著者名/発表者名
      安部大晟, 井上剛志, 犬塚修一郎
    • 学会等名
      第35回 理論懇シンポジウム
  • [学会発表] 星形成フィラメンの進化過程解明に向けたMHDシミュレーション2022

    • 著者名/発表者名
      安部大晟, 井上剛志, 犬塚修一郎
    • 学会等名
      日本天文学会 秋季年会

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公開日: 2023-12-25  

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