研究課題/領域番号 |
22KJ1591
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
安藤 純也 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | ナノシート / メタレン / パラジウム / 電気化学触媒 / 水素発生反応 |
研究実績の概要 |
(1) Pd ナノシートの高活性触媒サイトの特定:前年度新たな合成法の開発に成功したPdナノシートに対して、電気化学反応下での物質の高さ変化をその場観察することが可能な、電気化学原子間力顕微鏡 (EC-AFM) を適用することにより、HClO4)水溶液中での水素発生反応時における、表面の高さ分析を行った。その結果、HClO4溶液中のPdナノシートに対し電圧を印可すると、そのエッジサイト5 nm程度の幅において、その高さ上昇し、電圧印可を終えると元の高さに戻ることが確認された。このことから、Pdナノシートは特にそのエッジサイトにおいて高い触媒活性を有することを確かめた。 (2) Pdナノシートの原子層制御技術の開発: 9原子層の厚みを有するPdナノシートを鋳型としてその表面に片側1層ずつ、両面で計2層ずつあらたなPd層を塗り重ね、原子層数11層、13層、15層の厚さのPdナノシートを、溶液中でフリースタンディングに得ることの出来る手法を新たに開発した。また透過型電子顕微鏡を用いた電子回折像の撮影により、原子層数を増加させたPdナノシートは単結晶性を維持していることを確認した。 (3) 貴金属原子膜の電子状態と触媒特性への影響の解明:原子層数を制御したPdナノシートに対して、SPring-8での放射光XPS測定と第一原理計算を組み合わせた詳細な電子状態評価を行い、触媒特性評価の結果と組み合わせることで、貴金属原子膜の高い触媒活性の起源を議論した。特に、一般に触媒活性に大きく影響すると考えられている価電子帯の評価においては、SPring-8での測定により得られた高解像度の価電子帯XPSスペクトルと、9 L、11 L、13 L、15 Lの厚みを再現した第一原理計算モデルの計算結果により、dバンドセンターの原子層数への依存性と、その要因となる価電子帯の電子状態密度の変化を解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、当初予定をしていた研究目標の一つである無機2次元材料の原子層制御を、パラジウムナノシートの両面にパラジウム層を塗り重なて行くことにより達成した。また、原子層制御されたパラジウムナノシートを、当研究室において開発されたナノシートの製膜手法と組み合わせることにより、パラジウムナノシートを基板上に緻密製膜し、SPring-8 BL09XUでのHAXPES測定を実施した。これにより、高分解能でのナノシート表面の表面電荷や伝導帯の電子状態密度の評価を行い、その電気化学触媒特性への影響を解明した。 また、EC-AFMを用いたパラジウムナノシートの高活性触媒サイトの解明など当初の目標以上の研究成果も得られている。
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今後の研究の推進方策 |
発展的な研究課題として、前年度より取り組んでいるコアシェルナノシートの特性評価を継続して行っていく。本年度はSPring-8のBL09XUにてHAXPESを用いた伝導帯の状態密度の分析を行ったため、次年度では第一原理計算を用いた状態密度計算を行う。これにより、特異的に高い触媒活性を有するナノシート触媒の合成およびコアシェル触媒の高い触媒活性の起源の解明を目指す。 また、パラジウナノシート自体に対しても、より薄い膜厚のナノシートの合成や直径の制御など、より精密な形状・特性制御を目指していく。 これら精密に形状を制御したパラジウムナノシートに対して電子状態評価、電気化学特性評価、触媒活性サイトの評価を行うことによって、二次元物質に特有の触媒特性について更に精細な議論・解明が可能になると考えている。
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