研究課題/領域番号 |
22J20611
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
酒井 嵐士 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | 多元環の表現論 / ねじれ類 / ICE閉部分圏 / IE閉部分圏 |
研究実績の概要 |
本年度は大阪公立大学の榎本悠久氏との共同研究でIE閉部分圏の関手的有限性と分類に関する結果を得た。IE閉部分圏とは加群圏において拡大と像で閉じる部分圏であり、これはねじれ類(拡大と商で閉じる部分圏)とねじれ自由類(拡大と部分加群で閉じる部分圏)の共通部分として表せる部分圏に他ならないことが知られている。 すべてのねじれ類が関手的有限になるような多元環をτ傾有限な多元環といい、いくつかの特徴づけが知られている。これはすべてのICE閉部分圏が関手的有限であることと同値であることがすでに分かっていたが、すべてのIE閉部分圏が関手的有限であることとも同値であり、さらにIE閉部分圏が有限個しか存在しないこととも同値であることを示した。 関手的有限なねじれ類は台τ傾加群を用いて分類されることが知られている。双rigid加群という加群の対を導入し、これを用いることで関手的有限なIE閉部分圏の分類を遺伝的多元環(大域次元が1以下の多元環)の場合に与えた。さらに双rigid加群は古典的な傾加群と関連することがわかり、傾加群の変異理論を用いることで双rigid加群の変異を導入した。この変異により有限表現型の遺伝的多元環の場合に双rigid加群をすべて求める計算方法を得た。 また遺伝的多元環上ではIE閉部分圏は拡大と直和因子をとる操作で閉じる部分圏に他ならないことが知られており、この事実と分類定理を組み合わせることでAuslander-Smaloによる拡大閉部分圏の射影生成子と移入余生成子に関する予想が遺伝的多元環の場合に正しいことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は主に加群圏の拡大閉部分圏について研究を行った。本研究では加群圏においてはICE閉部分圏が主な考察対象であった。IE閉部分圏はICE閉部分圏やその双対概念であるIKE閉部分圏を含むとても広いクラスであるが、これに対し関手的有限性などの性質をある程度理解することができ、多元環のtau傾有限性との関連も発見された。またIE閉部分圏の対応物である双rigid加群に対し、傾加群との関連を通して変異を導入することができた。ICE閉部分圏に対しても類似の手法が導入され、ICE閉部分圏の理解につながることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
上記のIE閉部分圏に関する研究を引き続き行う。得られている分類定理は遺伝的多元環上での結果であるため、これをより広いクラスの多元環へ拡張することを目指す。多元環としてはIwanaga-Gorenstein環や大域次元が有限な環などを想定しており、双rigid加群についても適切に一般化した概念が必要になると思われる。また双rigid加群が傾加群と関連したことから、傾加群の一般化である宮下傾加群を用いた考察を行う。 また加群圏のICE閉部分圏と加群圏に付随する三角圏の関連を模索する。まずICE閉部分圏の導来圏における解釈を与えることを目指す。ICE閉部分圏の典型例であるねじれ類やwide部分圏(拡大と核と余核で閉じる部分圏)はt構造やthick部分圏など導来圏における対応物がすでに存在しており、ICE閉部分圏についてもその存在が期待される。またねじれ類は団圏における団傾対象と対応することが知られており、ICE閉部分圏についても 同様の対応を示すことを目指す。そのためにまずwide部分圏の対応物を調べる。 また完全導来圏における2項複体のなす部分圏についての研究を行う。近年、2項複体のなす部分圏に関する研究はいくつか行われており、これは三角圏の拡大閉部分圏であるため本研究の研究対象である。2項複体のなす部分圏の適切なイデアル商と加群圏は圏同値であることが知られているため、この対応のもとで加群圏との関連を調べる。特に加群圏のICE閉部分圏の対応物を調べる。また2項複体のなす部分圏の基本的性質の解明にも取り組む。
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