研究課題/領域番号 |
22J20830
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
都澤 諒 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | 量子ドット / 近赤外発光 / バンド端発光 / 欠陥発光 / ナノ温度計測 / 細胞温度計測 / バイオイメージング |
研究実績の概要 |
本年度は、温度依存性の異なるバンド端発光と欠陥発光を示すAg-In-Ga-S (AIGS) QDをコアとして、その発光特性を向上しつつ水への安定性を付与する新規シェル材料の探索を主に行った。まず、水に安定なランタン硫化物に着目し、NaLaS2、LaSx、Ga-La-Sをシェル材料として選択して、当研究室で開発されたAIGS@GaSxコア/シェルナノ粒子の合成法をもとにシェル合成を行った。La硫化物シェル合成の際、La前駆体としていくつかの前駆体を試し、LaCl3を用いた場合に得られる粒子の発光量子収率(QY)が高くなる傾向があることを見出した。AIGSコアナノ粒子のQYが約10~20 %であるのに対し、AIGS@NaLaS2はコアシェル化反応後にQYが5.8 %まで減少してしまったが、AIGS@LaSx、AIGS@GaLaSナノ粒子はそれぞれ22、37%まで増加し、バンド端発光の増強が確認できた。但し、配位子交換によってQD表面を親水化にした後に水に分散しようとするといずれのナノ粒子も凝集してしまい、TEM観察から粒子同士が融合しナノ粒子形状を維持していない様子が確認されたことから、La硫化物シェルでは水への安定性が不十分であることが示唆された。 そこで、もう一つのシェル材料候補としてSiO2に着目した。逆ミセル法によって合成したAIGS@SiO2コア/シェルナノ粒子はメタノール中でバンド端、欠陥発光の両方を示し、QYは12 %であった。但し、こちらも水に分散しようとしたところ凝集が見られた。合成の最後で配位子末端のメトキシ基を親水性のヒドロキシ基にする加水分解反応が上手く進んでいないか、このヒドロキシ基が精製時のメタノール・エタノールによる洗浄によってアルコキシ基に変換されている可能性があり、合成・精製方法の最適化が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では①近赤外領域でバンド端、欠陥発光ピークの二つを示すQDの開発、②QDの発光特性を向上しつつ水への安定性を確保する新規コア/シェル構造QDの合成、③合成したQDの温度計測能の評価及び細胞内における温度計測の実施、の三つを軸とし、概ね一年で一項目の達成を目標としていた。本年度は主に②新規シェル材料探索を行い、クロロホルム中でバンド端発光強度及びQYが向上するLa硫化物シェルの合成に成功したが、水への安定性が不十分であった。また、もう一つの候補としてSiO2シェル合成も行い、メタノール中でバンド端発光と欠陥発光の両方を示すAIGS@SiO2コア/シェルナノ粒子の合成に成功したが、水への分散を達成していない。以上の通り、水溶液中での分散性、安定性が十分なシェル材料の発見には至っていないため、進捗はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では引き続きAIGS QDを水溶液中でも安定とするためのシェル材料の探索を引き続き行う。候補としては、SiO2に加えIn、Ga酸化物系の半導体を考えている。これと平行して、AIGS QDの発光波長を近赤外領域へシフトさせるために、AIGSコアへの異種元素ドープによる発光波長制御を行う。当研究室では、AIGS QDのSをSeに置換したAg-In-Ga-Se (AIGSe)QDの発光ピーク波長が、In/(In+Ga)比によって600~900nmで制御可能であることを既に報告している。これを参考に、AIGS QDのアニオンおよびカチオンを同族異種元素で置換することによってバンドギャップを狭めるとともに、バンド端発光と欠陥発光の同時制御を試みる。
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