研究課題/領域番号 |
22KJ1594
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鷲見 一路 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | ミューオン / ミュオン / 異常磁気能率 / 電気双極子能率 / 線形加速器 / ディスクロード型加速管 |
研究実績の概要 |
大強度陽子加速器施設J-PARCでは、ミューオン異常磁気能率(g-2)の新手法での精密測定と電気双極子能率(EDM)の探索に向け、前例のないミューオン加速器の開発を進めている。ミューオン加速器で生成する低エミッタンスのミューオンビームが精密測定には不可欠であり、そのミューオン加速技術の実現を目指している。2023年度は、等価回路解析によるミューオン用円盤装荷型加速管(DLS)試作機評価結果の解釈とビームダイナミクスシミュレーションによるミューオン線形加速器高速部の誤差評価を行なった。 試作機については、一通りの高周波特性評価結果を設計値と比較し、共振周波数やセル間結合度は精度良く合っていることを示した。一方で、評価結果で見えた1度を超える移相ずれは設計より精度が低いことを意味し、定常状態の等価回路モデルを構築して設計値とのずれの推定を目指した。結果として、カップリングが理想的な場合より1%程度大きくカプラー周辺のセルの共振周波数が数十ppm上下している場合に評価結果のような移相ずれが見えること、この状態でも電力の反射は0.1%以下であることを示すことができた。さらに、3次元電磁場解析により、結合部の幅のずれ100 um程度、空洞内径のずれ10 um程度によるものである可能性を示し、実機製作で考慮が必要な寸法を見出した。 ビームダイナミクスシミュレーションでは、DLSへの投入電力とその位相を変化させ、ずれがない場合と比べて加速勾配の増減にどの程度影響し、位相空間分布がどのように変化するかを評価した。その結果、位相と振幅をそれぞれ1%、0.5%程度の誤差に抑えればエミッタンスと運動量分散の増加を十分抑えられることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
試作機の評価を通して製作誤差の全容を明らかにできたことから本研究課題は進展していると言える。また、シミュレーション上で加速管の製作誤差や電源由来の位相振幅誤差の影響推定を遂行し、容易ではないが達成見込みのある要求性能で高速部が実現できるという知見を得た。よって、本研究 課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、試作機評価結果で見えた製作誤差による移相誤差をシミュレーションに組み込むことでさらに厳密な誤差評価を行う。また、高速部全体の実機詳細設計として、高周波源にパルス圧縮器を組み込むことを想定し、波形の変化と電力の分配を考慮した加速管寸法最適化を行う。さらに、ミューオン冷却と高周波四重極加速器による加速の実証試験を行い、加速されたミューオンのプロファイルを測定することで高速部に入射されるビーム品質を明らかにすることを目指す。
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