研究課題/領域番号 |
22J21948
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
萩本 将都 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | 宇宙再電離 / 遠方銀河 / ミリ波・サブミリ波 / 銀河形成 / デジタル分光計 / デジタル信号処理 |
研究実績の概要 |
宇宙再電離を引き起こした電離光子がどのようにして銀河間空間に脱出したのかを理解する上で、鍵を握るのは銀河内部の局所的な星周囲の電離構造であると考えられる。そのため、本研究では、このような電離構造のモデル化手法の確立と、そのモデルを適用可能な統計的サンプルの構築に向けた、北半球で最高感度のミリ波・サブミリ波における広帯域デジタル分光システムの構築を目指している。 本年度は、まず星間物質の電離構造のモデル化の準備として、星間物質の物理的性質を決める多数の物理パラメータの中から、観測結果を制限する上で重要になるパラメータ群を探査した。ここで得られたパラメータ群を用いて、遠赤外線輝線[OIII] 88 umと[CII] 158 um輝線に加え、ダスト連続光と静止系紫外線から可視光のデータが存在する赤方偏移8.3の銀河に対して、観測結果を最もよく説明可能な星間物質モデルの探査を行った。その結果、いくつかの仮定は含むものの、特徴的な星間物質の電離状態を示すことがわかった。 また、広帯域デジタル分光システムの構築に向けて、本年度は、まず、分光計から取得可能なデータ形式の変更に伴う改修作業を行った。その後、分光計単体で可能な性能評価を実施した。また、本分光計が採用しているデジタル信号処理の技術を用いた新しい信号校正法のテストのため、デジタルのみでのシミュレータを製作している。 さらに、上記の新たな広帯域デジタル分光システムがメキシコの大型ミリ波望遠鏡に搭載された際に、システムの評価において重要な観測対象となりうる、遠方サブミリ波銀河サンプルについてのCO輝線のサーベイ結果をまとめた論文が3月に受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
宇宙再電離期の銀河に対する星間物質の電離状態のモデル化については、本年度中に予定していた各種物理パラメータと観測量との間の関係について明らかにし、必要なパラメータを制限することができた。また、次年度に予定していた宇宙再電離期前半の銀河に対する最初のケーススタディを始めることができている。一方で、新型の広帯域受信システムの構築に向けたデジタル分光計の評価試験は完遂できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、新型デジタル分光計の評価試験を完遂するべく、時間安定性と広帯域なノイズ信号を用いた線形性の評価を実施する。また、評価の過程で生じているシステムの問題については、機能の改修を行う。その後、現在並行して開発されている新型受信機との結合試験に向けて、開発中のシミュレータを用いて、デジタル信号処理の技術を用いた新しい信号校正法の実装方法を検討する。一方で、星間物質の電離状態のモデル化については、ケーススタディで得られた結果を投稿論文にまとめるとともに、他の宇宙再電離期の銀河に対するモデルの適用を進めていく。
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