研究実績の概要 |
細胞培養で使用される培養液はリン酸緩衝液をはじめとする電解質を豊富に含むため、電極およびチャネル部分の半導体カーボンナノチューブ(CNT)はアルミナなどの絶縁膜によって表面を保護し、夾雑物による溶液間での電流のリークを避ける必要がある。デバイス作製プロセスにおける酸化膜形成は高温環境で行われるが、半導体CNTに対するドーピング手法において特にp型ドーピング手法は熱安定性に乏しく、酸化膜形成過程でドーピングの効果を失ってしまう問題があった。そこで本年度では、細胞培養と電気特性評価を同一基板上で行うための半導体CNT薄膜トランジスタを作製した。まずは最初に、半導体CNTに対するp型ドーピング手法とその表面保護膜形成手法の開発を中心に取り組んだ。CNTの仕事関数と有機分子のHOMO/LUMOの関係を踏まえつつ網羅的に探索を行った結果、HATCN(1,4,5,8,9,11-hexaazatriphenylenehexacarbonitrile)がCNTに対して200℃まで有効なドーパントであることを見出すことができた。薄膜トランジスタを作製して200℃に加熱しデバイスの特性変化を調べたところ、加熱時間が長くなるにつれてキャリア移動度とON電流密度の向上を確認することができた。その後、保護膜の成膜方法について検討を行った結果、パリレンとアルミナ成膜による表面保護膜形成手法を開発することに成功した。本手法では、パリレンがHATCN膜の酸化と真空中での揮発を防ぐことで、p型ドーピングの効果を失わずにアルミナ膜を成膜することが可能になる。この2重構造により表面を保護したデバイスは酸素分子と水分子の透過を防ぐことがトランジスタの伝達特性から明らかになっており、任意の化学ドーパントに対する保護膜形成手法を見出すことができた。
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