研究課題/領域番号 |
22J23735
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松井 聖圭 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | トポロジー最適化 / マルチスケール解析 / 均質化法 / 高速フーリエ変換 / 弾塑性材料 |
研究実績の概要 |
本研究は,3Dプリントを用いたものづくりが土木分野においても一般的となる将来を見据え,積層造形ラティス構造を取り入れた新しい土木構造物のため最適設計手法の構築を目的とする.これを実現するためには,計算コストや造形可能性に起因する問題や解析結果と実現象の乖離といった様々な課題を解決する必要があり,解析と実験を組み合わせることでこれらの解決に取り組む. 初年度は,弾塑性材料を対象とした計算効率に優れたマルチスケールトポロジー最適設計手法の開発に着手した.具体的には,高速フーリエ変換(FFT)に基づく均質化アルゴリズムをミクロ構造解析に使用することで計算コスト(計算時間・メモリ要求量)を削減し,従来の有限要素法(FEM)を用いた手法では困難な解像度での最適化解析を可能なものとする.等方性の線形弾性材料に限定した手法はこれまでに開発しており,三次元解析における計算コスト削減に効果的であることを確認していることから,そこからの拡張を行った. まず,最初のステップとして,線形硬化則に従う弾塑性材料を対象に,FFTによる均質化アルゴリズムを用いた順解析のプログラムを実装し,通常のFEMを用いた場合との比較検証を行った.その結果,線形弾性材料を対象にした場合よりも,FFTによる計算速度向上の効果が大きいことを明らかにした. 次に,マルチスケール最適化問題を単純化したものとして,ミクロスケールのみのダクティリティ(エネルギー吸収性能)最大化問題を考え,プログラム実装を行った.ここで,感度解析式は既往のFEMを想定した手法を組み込んだ.いくつかの数値計算を実施したところ,弾塑性材料に特有の最適化結果として,材料の降伏の影響を減らすような構造となりやすい傾向が見られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は,ミクロとマクロの両方を考慮するマルチスケール最適化問題に取り組む前の基礎的検討として,ミクロスケールのみに単純化した問題について定式化およびプログラム実装を行い,以下に示すような結果が得られた. 最適な構造を求めるために必要となる「感度」の計算には,有限要素法(FEM)を想定した既往の手法を,高速フーリエ変換(FFT)を用いる本研究の手法に流用したが,この場合でも感度の精度が十分であることを定量的に確認できた.また,FFTは局所精度に劣ることが知られているが,トポロジー最適化においてはフィルタリングを用いることで問題なく最適な構造が得られることを実証した.そのうえで,計算に必要な時間・メモリを大幅に削減することができ,マルチスケールの最適化に拡張した場合においても本手法の有用性が期待できる. これらの成果は国内外の学会において発表予定であり,また,線形弾性材料に限定した場合の研究成果については国内論文を投稿している.以上のことから本研究課題に対する取り組みに問題はないと判断する.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,初年度のプログラムを拡張し,マルチスケールの弾塑性解析およびその最適化を実現する計画である.そのためには,周期的なミクロ構造(微視構造)に仮想的な材料試験を行い,巨視的な材料構成則を求める「数値材料試験」と呼ばれる解析が必要となる.順解析のプログラム実装は完了しているため,応力ひずみ曲線から弾塑性構成則を同定する仕組みを新たに組み込む.その後,感度解析の定式化およびプログラム実装を行い,マルチスケールの最適化を実現する.
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