研究課題
ここ十数年における世界のロドプシン研究は、指数関数的な発展を見せており、最近では多数の酵素ロドプシン(光活性化酵素)が発見されている。我々はそれら酵素ロドプシンの作動メカニズムに迫るべく、大腸菌および哺乳類細胞のみならず、新たに昆虫細胞・酵母細胞を用いた試料調製を行うことでロドプシンの常識を覆す結果を得た。①酵素ロドプシンは、光を感受する膜内ドメインと、触媒反応を担う酵素ドメインから構成されており、膜内ドメインが直接、酵素ドメインの反応を制御している点が他のロドプシンとは異なるため、その光活性化メカニズムが興味深い。そこで、分子振動変化を捉えることが可能な赤外分光法を用いて、光活性化グアニル酸シクラーゼ(Rh-GC)の光誘起されたタンパク質の変化を捉えた。現在データを追加して論文を作成中である。②ロドプシンはレチナールという単一の発色団を持つにも関わらず、紫から赤色に至る広範な吸収波長多様性がある。これまでに、吸収波長を制御する3つのアミノ酸残基が知られていたが、昨年7月に酵素ロドプシンから発見された4つ目となる波長制御残基を同定し、米国化学会誌に報告した。③微生物ロドプシンの持つレチナール(発色団)は全トランスから13シスへの光異性化が常識であったが、2020年に報告された新奇酵素ロドプシン(NeoR)の光反応を調べると、全トランスから7シスへの光異性化を示した。また、一般的な微生物ロドプシンは液体窒素温度において光反応を示すが、NeoR中では水が氷る温度において光反応を起こさないことを明らかにし、2022年10月に米国化学会に報告した。上記3つのトピックに加え、ベストロドプシン(2022年に報告)やカリウム選択的チャネルロドプシン(2023年に報告)と呼ばれる新たな微生物ロドプシンの分子メカニズム解明にも取り組み、ロドプシン研究の発展にも貢献できたと考えている。
●日本蛋白質科学会ポスター賞 名古屋 令和5年7月7日●オプトロニクス社オンラインニュース記事に掲載●女子中高生夏の学校2023~科学・技術・人との出会い~, 2023年8月5-7日●実験医学, 2023年9月号 Vol.41 No.14●若手の会だより, 生物物理 63(6),338-339(2023)●ドクター交流会,名古屋工業大学(依頼講演)●学長表彰,名古屋工業大学,2024年3月18日
すべて 2023 その他
すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 2件) 備考 (2件)
Biochemistry
巻: 62 ページ: 2013~2020
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Cell
巻: 186 ページ: 4325~4344.e26
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https://www.nitech.ac.jp/news/press/2022/9967.html
https://www.nitech.ac.jp/news/press/2023/10538.html