研究課題/領域番号 |
21J21857
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
夏原 大悟 豊橋技術科学大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | マイクロTAS / マイクロ流体デバイス / 微小流体分注理論 / 縦型相ガイド / マルチプレックス遺伝子診断 / 感染症診断 / LAMP法 / 遺伝子増幅法 |
研究実績の概要 |
本年度は開発しているマルチプレックス遺伝子診断デバイスの重要な機能である反応容器への微小流体の分注現象の解明と、デバイス上でのヒト感染症ウイルスの同時迅速診断に取り組んだ。微小流体の分注現象の解明では、流路内に設けた受動バルブの耐圧性能と流路デザインから分注可能な反応容器の数を推測する分注理論式を明らかにした。これにより、デバイスへ導入可能な最大流量の算出が可能となった。さらに、これまでマイクロ流路内に凸構造を設けた横型相ガイド形状を受動バルブとして活用していたが、流路幅を局所的に狭くさせた縦型相ガイド形状を新たに考案し、耐圧性能を大幅に向上させた。これにより、従来の4倍の流量(20 uL/min)による導入を可能にした。また、分注理論式から分注可能な反応容器数を増やす方法として、反応容器間の流路長を短くすることが有効であることが分かった。そこで、反応容器を上下二列に配置したデバイスを新しく考案し、分注可能な反応容器数を従来の5個から10個まで拡張することができた。 デバイス上でのヒト感染症ウイルスの同時迅速診断では、新型コロナウイルス(COVID-19)、SARS、A型インフルエンザ、インフルエンザH1N1 pdm09型の4種類の感染症ウイルスを本診断デバイス上で同時迅速診断が可能であることを実証した。診断には比色指示薬を用い、LAMP法による遺伝子増幅後の反応容器の色の変化(陰性:紫色、陽性:水色)を判定した。このとき、反応容器毎の色情報をL*a*b*色空間を用いて解析することで定量的に陰性/陽性を判定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本提案技術を確立するうえで、最も重要な機能である微小流体の分注現象の解明を行ったことで、デバイスデザインの最適化が可能となった。これにより、マイクロ流路の形状から分注可能な反応容器の数、導入可能なサンプルの最大流量を推定することが可能となった。さらに、縦型相ガイド形状を考案したことで、導入流量を従来の4倍に向上することができた。しかし、10個の反応容器(合計30 uL)の分注が完了するまでには2分程度を要するため、さらなる迅速診断を目指すうえで、流路デザインの最適化が必要である。現在、空気を受動バルブ間でトラップすることで受動バルブにかかる圧力を減殺できる新規の流路デザインを開発しており、導入流量を増加できることが示唆されている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はさらに導入流量を増加させることが可能となる新規の受動バルブの開発に取り組み、10個の反応容器へ30秒以内のサンプルの導入を目指す。さらに、本デバイスのもう一つの重要な機能である混合部に1回のプロセスで作製可能な高効率受動ミキサの開発を行う。
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