研究実績の概要 |
今年度は、有機物と酸によって形成される塩をベースとする高温無加湿燃料電池用の新規プロトン伝導体に関する研究に取り組んだ。さらに、そこで得られた知見を周期的構造を有する構造体に応用し、新たなプロトン伝導体の開発を試みた。 ①塩をベースとする新規プロトン伝導体:昨年度得られた結果である、塩基性のポリ(4-ビニルピリジン)(PVPy)に対してリン酸(PA)を反応させた系が非常に高いプロトン伝導性を示すことを踏まえ、酸と反応できる塩基サイトを2つ持つイミダゾール(Imi)に対し、SiO2および塩酸(HCl)を反応させた三元型のプロトン伝導体 (Imi-HCl-SiO2)を作製した。作製したプロトン伝導体を添加した電解質膜は高温・無加湿条件で高い出力(521 mW cm-2)を示した。この成果はChemistry of Materialsで公開された。 ②構造体をベースとするプロトン伝導体:成果①を応用し、周期的な構造体中にピリジンリン酸塩を形成することで効率的なプロトン伝導を実現できると考え、金属有機構造体(MOF)に着目した。2,5-ピリジンジカルボン酸(PyDC)に対してリン酸(PA)を配位したリンカーを使用し、新規プロトン伝導性MOF(UiO-66-PyDC-PA)を作製した。この成果は国際学会でbest poster awardを受賞した。同様に周期構造を有し、より強固な結合を有する共有結合性有機構造体(COF)をベースとする新規プロトン伝導体の開発にも取り組んだ。2,5-ジアミノピリジンをリンカーとして用いることでPAの配位が可能となり、結果的に1×10-2 S cm-1以上の高い導電率を達成した。
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